2018-01-28

[] #48-4「本当にあった嘘の話」

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これは事実に基づく、とある二人の少年冒険と、死を描いた物語だ。

少年の一人は貧困街の出で、出世を夢見つつ小間使いに明け暮れ……

ちょっと待てよ。その話おかしいだろ」

叔母さんの話に飽きていた俺は、食い気味にツッコんで話を中断させた。

「まだ序盤だよ。どこにツッコミどころが……」

登場人物が二人とも死んじゃってたら、誰がその話を知っているんだよ。少なくとも物語と大した接点がない叔母さんが、詳細に知っているのは明らかにおかしい」

「いや、これからこれから

そもそも事実に基づく』って言い回しが既にダメなんだよ。基づいていても脚色しちゃったら、それは事実から遠のいたものだろ」

叔母さんは溜め息を吐くと、俺たちに諭すように答えた。

「じゃあ何か? 実際にあった不幸話をそのまま切り取ればいいと?」

「そうだよ」

「私の話したことは脚色まみれで、言ってることのほとんどは嘘だらけかもしれない。けど、それなりには面白かっただろ。少なくとも事実をそのまま切り取るよりは」

面白いとか、そういう話じゃないだろ」

「いや、そんなもんなんだよ。『事実小説より奇なり』なんていうが、大抵は事実のほうが退屈で陰鬱だし、小説のほうが面白いんだ」

叔母さんは頑なだった。

そこまでムキにならなくてもと思ったが、俺たちは叔母さんの感情に押される。

俺たちは納得する素振りを見せざるを得なかった。

陳腐ながらに学べるところもあっただろう?」

「……まあ」

「弟のほうは、私の話を聞くまでモチーフすら知らなかっただろ?」

「うん……」

「ほら、私の脚色まみれの話で、モチーフに関心を持つ“きっかけ”にもなったじゃない」

正直、叔母さんの主張は詭弁しかなかったが、主張そのものは分からなくもなかった。

「私の話は伝えることには成功しただろ。事実どおりだとか、史実どおりだとか、原作どおりであってほしいなら、それこそ参考資料原作を読めばいい」

たぶん、叔母さんからすれば、俺たちに興味を持たせようとしたかっただけなのだろう。

そして事実も、その脚色も、あらゆるものを、ただそれだけの具と割り切ったのだ。

「人を楽しませるために作られたものは、いつだってどこかは過剰で、どこかは足りないものなんだよ。フィクションってのは人を騙すものだ。ならば積極的に、騙されることを楽しもうじゃないか

まあ、叔母さんの言うことも一理はあるのだろう。

だが、俺たちが聞かされていたのは叔母さんによる“本当にあった話”だ。

それが欺瞞や自慢にまみれていたことを攻めているのに、作り話としての意義を語って正当化するのは筋違いだ。

そもそも俺たちは叔母さんの話を渋々聞いていただけだから、こんな強弁をとられたら呆れるしかない。


その後も俺たちは、叔母さんの虚実入り混じる話を数え切れないほど聞かされた。

『私がゲームクリアできるまで話を続ける』とは言っていたが、本当にクリアできるまで話を続けるとは思わなかった。

「はあ~、やっとクリアだ」

それはこっちのセリフだ、と俺たちは思った。

話を聞いていただけだったが、俺たちの徒労感は叔母さんよりも遥かに酷い。

「これ、裏エンディングとかないよね?」

「いや、仮にあったとしても、自分で買って、自分の家でやってください……」

俺たちは叔母さんをゲームから引き剥がすと、部屋から追い出した。

「この部屋に鍵を取り付けることを考えたほうがいいかもな……」

俺たちは次回に向けての叔母対策を考えながら、大晦日を過ごすのであった。

(#48-おわり)
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