クレームを付ける人は大体同じような思考回路に沿っているということだ。
最初は、とにかく単なる苦情ではないことを強調する。
「お前の店のために言っているんだ」が一番多い。
「他の客が同じような目に遭わないように言ってるんだ」も多い。
もちろん、そもそも苦情を入れたのは、本当にお店のためになることをしようと思ったからじゃない。
嫌な思いをしたからだ。
でも、嫌な思いをしたという理由で他人を責めることには無意識に罪悪感を持つ。
他人を責めるということ自体が常識ではやってはいけないことだからだ。
だからこれはただの苦情じゃない、「お前の店のために」「他の客のために」という
(でも、店が客に嫌な思いをさせちゃいけないのは当たり前のことなんだから、
嫌な思いをしたと店を責めるのは全然悪いことじゃないと俺は思っている。
だから、「嫌な思いをした、どうしてこんな対応をされなきゃいけないんだ。謝ってくれ」
と言われる方がよっぽど苦情としてまっとうなものだと思うし、
クレーマーではない人の苦情は大体そういう文脈になる)
が、苦情の内容を精査していると、自分の苦情に正当性がないことがわかってくる。
大体は、クレーマー自身が自分のやるべきことをしていなかったり、
問題とされた店員の対応に何の落ち度もなかったりする。
そうなると、クレーマーの言い分は変わってくる。
「それでも嫌な思いをしたことには変わりないんだ」と言うわけだ。
そして、最初は店のマニュアルなんかをターゲットにしていた苦情の内容が、
笑いながら言われたとか、女だからとバカにされたとか、蔑むような目をされたとか、そういうことだ。
最初の「お前の店のために」「他の客のために」という高尚な義憤なんかとっくにどこかに行っている。
そもそもの出発点が、嫌な思いをさせられたことにしかないからだ。
でも、最初に義憤を振りかざしていたばっかりに、着地点を見つけられなくなる。
むやみに意地になる。
そうやって話がこじれて、最終的に店の責任者が出て行ってなだめることで対応は終わる。
乙武の主張は、あまりにもこのテンプレに当てはまっていて笑ってしまった。
乙武は最初、「同じような屈辱を受ける車椅子ユーザーのため」に店名を晒したと言っていた。
それが、事前の予約なしに自分を抱えて二階に上げろという主張が無理のあるものだという意見が
予想外に多かったためか、今は店側の言動が心無いものだったこと、
それによって同行していた女が泣いたことに焦点を当てている。
実際にどんなやりとりがあったのかは当事者以外にはわからない。
当事者だって、既に自分の記憶を都合のいいように書き換えている可能性がある。
俺の経験上、「泣いたから相手はひどいんだ」という言い方が出てくるのは、
本当に店側の対応がひどかったのなら、泣いたことをそこまで強調しなくたって勝てるからだ。
「人に嫌なことをしちゃいけない」という、一般的な常識に由来するものだ。
それなら最初から、嫌な物言いをされて嫌な思いをしたと言えばいい。
車椅子が、障碍者がと言うから、「乙武のような偉い障碍者が義憤で言っているから
人に嫌なことをしちゃいけない。乙武はその常識を立派に破っている。
乙武さん、あんたはただのクレーマーだ。クレーム処理のバイトをしていれば毎日のように出くわす、自分勝手なクレーマーだ。
そしてそれを一生懸命擁護している人たちは、クレーマーを持ち上げているだけだ。
乙武が障碍者で、ベストセラーの本を書いた有名人だから擁護しているだけだよ。
しかも相手の店主が何だか気に入らない一般人だから叩いてるだけだ。
苦情が正当なものだったら、店員が再教育されたりマニュアルが変わったりする。
が、行き過ぎたクレーマーが文句を付けまくっても、店の出入りを断られるようになるだけだ。
こういうやり方をしていたら、車椅子対応に力を入れようと思う店よりも、