ガチ恋勢という生き物がいる。
誰に頼まれたわけでもなく地獄の業火に焼かれている変態マゾであり、谷底に向って全力疾走しながら空を飛ぶことを夢見る哀れな畜生である。
嫉妬の毒に侵されて徐々に正気を失いつつある地獄の住人であり、それはもちろん俺のことだ。
付き合えるわけがないのなんて最初から分かっているし、これまでにそんなチャンスが巡ってきたことはない。
う~んう~んと考えた結果、カピカピの脳からひねり出されたクソがこれだ。
天秤の片方に乗るのはアイドルと付き合う自分だろう。もう片方は?
アイドルと付き合う自分と釣り合うような質量を持った何かが、自分のこれまでの人生にあったのか?
例えば不幸のどん底にあって、この不幸を埋め合わせるためには宝くじにでも当選しないと釣り合わない、と考えるのは理解できる。
俺は不幸のどん底にあるのか?いや、そうでもない。一応普通に生活できている。
何か、不幸、あったかな。無いかもしれない。人並みの不幸しか知らないと思う。
つまり、これだ。
「なんの物語も持っていない人生」という巨大な空虚との釣り合いを取るため、ということだ。
あー
嫌なことに気付いてしまった。
でも大丈夫。