2023-12-22

湿ったパイプが語り出す」

パイプとは魚、つまり足はなくヒレで進む魚である。すなわち足で走ることなどは不可能、無理

しかし、今目の前を足が生えたパイプが走っている。どうしてどうしてこうなった?どうして


俺はただバイトをしていた。水槽を泳ぐ魚を逃げ出さないように監視するバイトをだ。

それで突然、魚がこう…ザバッと水槽から上がってきたと思ったら

あ、あ、あ、脚が生えて、すね毛が生えた立派な筋肉の脚がな

俺の横をドシドシ歩いて行きやがった

もちろん、俺は追いかけたさ。逃げたことがバレたら俺はクビどころか損害賠償まで喰らうから

だが、奴は追いかければ追いかけるほど早くなった。奴はとにかく走る速度が早く、速くなんだ

魚の癖に俺は全然追いつけなくてその

回想してる場合じゃねぇ、目の前のアスファルトを奴は二本の脚で1歩、1歩、踏み進みやがる。

当然、周りも見る。当たり前だ。しかし、止めてくれる奴はまあったく現れやしない。

ああ、もう、腕がないくせにどうしてこうも早いんだ?!ちょっと俺のペースが落ちた内に奴は10メートルも差を広げてやがる!

行先はどこだ?海か?川か?国会議事堂か?

からねぇ、全てがわからねぇ


は、はぉ、はぁ…も、もう無理はしれない

奴はもう100、150、メートル先に行っちまってる

水分も取らずに走ってきたせいかもう喉が砂漠みたいにカラッカラだ。足がガクガク震えている

とりあえずそばマックでや、休むか…

中には女子高生三人組がいた、俺は注文しないでとりあえず給水器からコップ1杯水を飲んだ

「ねーこれ見てぇ、魚が踊ってるぅ!」

「わーイキッてるー変なのー」

その会話を聞き、俺は飲んでた水を全てコップに吐きだした。いや、まだやつと決まったわけじゃないまだ

「てかこれ、パイクじゃん、ノーザンパイク」

絶望だ、奴はもう踊ってイキるまで知能が成長している。「踊ったパイクがイキリだす」ってか

「ねーねー私俳句考えたんだ」

「えー?どんなの?」

「んっとね… 曙や屋上の駅永遠に

「わー!よくわかんけどすげぇ草」

おいおい、それは人の俳句じゃないか

「盗んだ俳句で語り出す」じゃないんだよ

とにかく早くやつを追いかけなければ






そうして走っていると、電話がかかってきた

まさかと思い、電話番号を見るとあのバイト先のおやじだった。俺に監視を頼んだあの

「は、はい…███ですが」

「███か。おいニュースたかぁ?」

「ま、まだ見てません…」

「そっか、まあいいや。お前、クビだからな」

ガチャッ…

電話が切れた。どう反応していいのか分からず、俺は満点の星空を眺めながら、覚えたてのタバコを一本ふかした

自由になれた気がした███の夜」





「以上、語り手は魚ことノーザンパイプでした」

おわり

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