2023-10-17

昔の方が華やかだったこともあるんだ

俺はもうおっさんだが、おっさんから知っていることもある。

今の若い子は知らないだろうけれど、昔は個人経営おもちゃ屋ゲームショップも多かったんだ。

今はもう遠く地元を離れてしまったが、実家の近所には個人経営ゲームショップがあった。

当時のゲームショップモニター…いや、テレビがとかく多かった。

レジの向こうにテレビが置いてあって、延々とゲームOPを流し続ける。

ゲームの並ぶ棚の近くにはテレビゲーム機。

人気作や話題作を、お試しで遊ぶこともできたんだ。

タワレコでのCD試聴のようなものだ。

俺は延々と流れ続けるゲームOPを延々と眺めるのが好きなガキだった。

鼻水垂らしながらぼーっとOPを見続けていた。

何故だろうか。でも今ならなんとなくわかる気がする。

当時ゲーム最先端の娯楽で、そこには夢や希望が詰まっていた。

見知らぬ世界が広がっていた。

俺はOPを観て、自分独自物語想像していた。

この後、このゲームの展開はこうなって、こうして、ああなって……

それだけでも十分に楽しかった。

人間の娯楽性は想像力にある。そんなことを教えてくれたのがゲームショップだった。

ただ、その華やかさも好きだった。

大人になった俺は一人暮らしを始め、閑散とした静寂に音を欲した。

給料が出るとモニターを買い、PCを買った。

ダンサー・イン・ザ・ダークDVDも。

PCには朝から映画を流した。

自動リピート再生するように設定し、家を出る。

白い息を吐きながら帰ってくると真っ暗な家の中。

しかし俺のことを音が出迎える。映像が迎えてくれる。

それから俺は四六時中ダンサー・イン・ザ・ダークを流し続けた。

寝るときには音を小さくするだけで、停止はしない。

ラジオを聞きながら寝落ちるようなものだ。

そのうち俺は帰宅するときに流れている場面も予測できるようになった。

夕飯を食べるとき、たいてい床が抜ける。

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