一度ぐらい誰か好きな人とお付き合いして
そう、そこなんだよ
誰かに何かをもらいたいとは思ったことがあるけど誰かに何かをあげたいとは思ったことがない
というかかなりお気に入りの人間じゃない限り何してやればいいのかわかんないしなーんにもしてやりたくなくて
一応好きだと言ってくれた人にも何もしなかったし何もあげなかったし手酷く傷つけてお別れしてしまった
だから迷惑がられたって困惑されたって何でもするわって言ったけど何もさせてくれなかった
さすがに据え膳になる勇気はなかったけどたとえそうしたってあの人は指一本触れなかったと思うだってそうする価値がブヨブヨ太って醜い私にはなかったから
でもやってみればよかったと思う 突然全然脱いで迫ってみればよかった 良く知らないけど男の人ならそうしたら食ってくれるかもしれないんでしょ?
もちろん当時からしっかりデブスだったけど女性から男性へのセクハラなんて概念はまだまだない頃だったから
愛されなくても良かったやり捨てで良かった辛すぎる人生のただ一度の良い思い出になってくれたかもしれないし反対に一生消えないトラウマになったかもしれないけどそれで良かった
それぐらい好きだった それぐらい特別だった でも全然手の届く人じゃなかった
かっこよかった 面白かった まるでこの世界の全てを知ってるみたいだった 優しかった 一緒にいるといつも楽しかった 色んなことを教えてくれた きめの細かい頬、すっと通った鼻筋、冷たい目 叶うことなら触れてみたかった 全然手が届かなかった 私のこと明らかに馬鹿にしてたね 優越感からくる優しさだったね それでもよかった 冬のエレベーター あなたの個性的ですてきなパーカー 冷たい空気 話した言葉 全て覚えている 今何をしているの?きっとあなたは世界のどこかで幸せでいるねどうか幸せでいてね 私は全然幸せじゃないけど