愛知に本社をおく名門企業といえば、トヨタ、JR東海、中部電力がおそらく御三家とも呼べる存在であろう。
この中で、トヨタは別格としても、日本の大動脈である東海道新幹線や中央リニアを傘下におくJR東海が名古屋の企業であることは、おそらく名古屋人のプライドのうちの10%程度は占めるのではあるまいか。これは言うなれば、「トヨタの本拠地」「秀吉信長家康の出身地」「中日ドラゴンズの存在」が各20-30%程度、彼らのプライドを構成するのに次ぐ地位であり、たとえば天下名門名古屋大学や名古屋メシやグランパスエイトや大相撲名古屋場所の存在よりも、彼らの精神にとってJR東海は重要なものなのである。名古屋人以外には想像もつかぬことであろうが、東海道新幹線の年末年始の乗車率だとか、リニアを巡る静岡県とのあれやこれやがニュースになるたびに、名古屋人は自分達が日本を動かしていることを再認識し悦にいるのである。
しかし、甚だ都合の悪いことに、JR東海が今の形での企業体でいることには何らの必然性もなく、ただ国鉄民営化の際に分割された一社にたまたま名古屋を本社とすることが決められ、そしてその一社に東海道新幹線を持たせることがナワバリの上で決められたということに過ぎないのである。分割民営化が例えば東西での分割であったりだとか、そもそも分割民営化をしなければJR東海は今のJR東海ではなかったのである。こうして考えると、名古屋人の精神の拠り所というのは案外脆いものだという考えに至るのである。