自分の受けている境遇を、現実以上に酷いもののように語ったり。
対したことの無い話を、殊更面白い事のように語ったり、オチを作ったり。
その友人も例にもれず、話をよく盛る奴で
居酒屋の店員とちょっと会話した事を、「鼻の下伸ばしてナンパしはじめてさぁ」とか言いふらしたり
ちょっといかつい兄さんと肩をぶつかって、双方「あっすいません」くらいで終わったのを
「ドス聞いた目で睨まれて、しょんべん漏らしそうになったよ~」とか言ったり、良くもまぁポンポン話作れるなぁと感心するくらいだったんだよ。
就職して一年がたって、そいつと久しぶりに飲むことがあったんだ。
就職一年目ってみんな一気に老けるよね。例に漏れず、友人は愚痴を言いだして、あ、またこいつの盛り話聞けるな~ってちょっとワクワクしてたんだよ。
「うちの会社、残業時間を調整するために、タイムカードやった後も仕事しなきゃなんねーのw」だとか
「それなのに人件費が高すぎるとか言われて、人が少ない時間はワンオペでやらされた」だの
「サービス出勤して月の休日2日しかなかった」だの、「それしなきゃ店が潰れて仕事無くなる」だの
いや~、酷い話の数々を聞いたんだよね。でも全部本当なんだよね。俺も昔そこでバイトしてたから、社員がそういう事してたの知ってたから。
「まぁ休憩は厳しくて絶対だから、ゆっくり休めるんだけどね」って、せっまい着替え室のパイプ椅子でゆっくり休めるのかっつーの。そこ盛るなよ……
話を盛れるのって、盛れる余地があるくらい幸せだからなんだよねって思って
なんだか悲しくなってしまった。