姿かたちが似ていたわけではないし、趣味が近かったわけでもない。ただ仕事や人生、異性関係の哲学がとても良く似ていた。彼女と初めて寝てからその関係が終わるまでは2か月もなかった。本当に短い時間だった。その間には色んなことがあったから、彼女と寝たのも片手で数えられるほどの回数だった。だがそれは僕たちの人生の中で特別な時間だった。
彼女と一緒にいられなくなった理由についてはあまりに長い話になるので省くが、彼女と一緒にいるとき、僕は彼女が求めていることがわかるし、彼女は僕が彼女が求めていることがわかっていることをわかっている。今まで感じたことのない不思議な感覚だった。僕たちは互いのことを自分のことのように理解することができていた。
ある時彼女が冗談めかして、実は私たち兄妹じゃないですよね、と言った。ありえない話だったが、そうだったほうがしっくりするくらい僕たちは似ていた。似すぎているほどだった。互いにパートナーのいる関係だったけれど、もしお互いがフリーになったらという話をしたことがある。二人の意見は同じで、一緒に暮らすこともあるかもしれないが、長くは続かないということだった。僕たちはお互いのことが好きだったし、かけがえのない存在だと思っていた。でも恋人ではいられないくらい似ていたのだ。
今になってみれば、いっそ兄妹だったら良かったのにと思う。そうしたらずっと一緒にいられたのに。
僕たちは恋愛小説に出てくるような運命の人ではなかったけれど、確かにかけがえない相手だった。本当は失くすべきじゃない相手だったのだと思う。でも失ってしまった。今でもあの時間を取り戻したいと思うし、妄想のように見えると思うが、彼女がそう思っていることも僕にはわかる。でもそれでいいのかもしれない。失くしたものだけが美しいのだから。彼女とこの話をしたことはないが、彼女もきっとそう思っているだろう。