2019-07-22

パンティーの多い下着

二人の若い紳士が、すっかりくたびれたパンティーをかぶって、だいぶ山奥の、木の葉のかさかさしたとこを、こんなことをいいながら、あるいておりました。

「ぜんたい、ここらの山はけしからんね。パンティーの一着も落ちてない。なんでも構わないから、早くスパンスパーンと、頭にかぶって見たいもんだなあ。」

黄色スキャンティーなんぞ、二三着かぶったら、ずいぶん痛快だろうねえ。くるくるまわって、それからどたっと倒れるだろうねえ。」

それはだいぶの山奥でした。案内してきた専門のパンティ泥棒も、ちょっとまごついて、どこかへ行ってしまったくらいの山奥でした。

それに、あんまり山がものすごいので、パンティーが破れてしまいました。

「じつにぼくは、二千四百円の損害だ」と一人の紳士が、パンティーをちょっと裏返してみて言いました。

「ぼくは二千八百円の損害だ。」と、もひとりが、くやしそうに、あたまをまげて言いました。

はじめの紳士は、すこし顔いろを悪くして、じっと、もひとりの紳士の、顔つきを見ながら云いました。

「ぼくはもう戻ろうとおもう。」

「さあ、ぼくもちょうど寒くはなったし腹は空いてきたし戻ろうとおもう。」

「そいじゃ、これで切りあげよう。なあに戻りに、昨日の宿屋で、パンティーを拾円も買って帰ればいい。」

「ひもパンもでていたねえ。そうすれば結局おんなじこった。では帰ろうじゃないか

ところがどうも困ったことは、どっちへ行けば戻れるのか、いっこうに見当がつかなくなっていました。

風がどうと吹いてきて、草はざわざわ、木の葉はかさかさ、木はごとんごとんと鳴りました。

「どうも腹が空いた。さっきから横っ腹が痛くてたまらないんだ。」

「ぼくもそうだ。もうあんまりあるきたくないな。」

「あるきたくないよ。ああ困ったなあ、パンティーをたべたいなあ。」

「喰べたいもんだなあ」

二人の紳士は、ざわざわ鳴るすすきの中で、こんなことを云いました。

その時ふとうしろを見ますと、立派な一軒の西洋造りの家がありました。

そして玄関には

LINGERIE SHOP 西洋下着

PANTIES HOUSE パンティー軒

という札がでていました。

「君、ちょうどいい。ここはこれでなかなか開けてるんだ。入ろうじゃないか

「おや、こんなとこにおかしいねしかしとにかく何かパンティーがあるんだろう」

「もちろんあるさ。看板にそう書いてあるじゃないか

はいろうじゃないか。ぼくはもう何か喰べたくて倒れそうなんだ。」

 二人は玄関に立ちました。玄関は白い瀬戸煉瓦で組んで、実に立派なもんです。

そして硝子の開き戸がたって、そこに金文字でこう書いてありました。

「どなたもどうかお入りください。パンティー 。」

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん