2019-06-04

たまたままれ子供が異分子だった。

盲目の子供は、周囲の様子を探る為に腕をぶん回した。

その拳は親の腹部に当たった。臀部にも当たった。後頭部に、向う脛に当たった。

盲目の子供は、世界の大きさを知らなかった。なぜなら動けばすぐ何かにぶつかるから

それは彼の行動範囲を狭める理由にもなった。

幼い頃、目が見えていた時彼はクリスマスゲームを買ってもらった。許された唯一の娯楽を彼は大いに楽しんだ。

腕を振り回しても、何にぶつかってもその世界では経験値を得られた。自由に走り回れるフィールドがあった。

狭い箱庭は急遽広い豪邸に変貌した。

美しく青き草原は、何処までも続いて見えた。

近所のスーパーより近くて美しい場所。手を伸ばせばいつでも届いた。

清らかな流れの川を見て、我が物のように感じた。

あれもこれも、自力では手に入らない物を揃えたくなった。

足をバタつかせて地面を蹴り

蹴ったつもりの地面がいやに柔らかい事に気付いた。まるで、そう、人肉に近い感触だった。

感触が楽しくてますます蹴った。

見るも無残な死骸の上でダンスを踊る!踊れば踊る程地面は硬くなる。

地面は時々呻くような声をあげた。

それは咆哮であり、嘶きであり、怒号であった。

おかしい、虚構の地面が唸る筈もないのだ。

そう、大人しくさせるには踏み締めなければならない。そうして広大な大地を何度も何度も足で痛めつけた。

自分虚構の中で前に進む為に。

ゴーグルを外してみると、足元でゾンビのような顔色をした人体がこちらを睨んでいた。

長い事踏み続けた為に柔らかさは感じられない。

初めて見た人体は何処か自分に似ていた。虚構の中でも人は年を取る。そのありきたりな老化を、ゾンビの顔に見出していた。

恐怖で足が竦む。冒険譚を築き上げようとしていた?とんでもない。プレイしていたのはホラーゲームだ。

正に実の親が勇者の首を締め上げる所だ。

大団円。皆様、拍手の用意を願います

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