僕には彼が眩しかった。
彼は周囲と関係を築くのが上手い。
それもあってか情報収集のアンテナが多く、興味の範囲も広いので、なにかとネタが尽きない。
おもしろそうなことがあればよく突っ込むし、
何かやりたいことがあればよく周りを巻き込むし、
そのおかげか、どんどん仲間が増えているように見える。
僕は受け身タイプの人間で、特にやりたいこともないし興味の範囲も狭い。特に話すネタもないから誰かと会話したりするのが苦手。
彼はそんな僕にも話しかけてくれて、一緒にプロジェクトを進めたり、たまには遊びに行ったりもした。
積極的に話しかけてくれて、技術系の話とかアニメの話とか、こういうのやりたいんだよねっていう話とか、いろんな話をしたと思う。
しかし、ある日突然、僕の中に「彼と接するのが面倒くさい」という思いが芽生えてきてしまった。
彼の積極性についていけなかったのだと思う。
なんだか彼と関わることに疲れていて、一人にして欲しいという感情が急激に伸び始めていた。
その頃から僕は彼を嫌うようになった。時には無視をしたり陰口も叩くようになっていた。
そうしているうちに彼は離れていった。ようやく解放された。これからは自分のペースで過ごせる。そんな気分だった。
そんな負の感情が落ち着いたあるとき、「そうか、これは嫉妬なんだ」と思うようになった。
僕も彼みたいに人気者になりたい。彼みたいにいろんなことを成し遂げたい。彼みたいに成長したい。彼みたいに………。
僕が陰口を叩いている間にも彼は努力を重ね、ますます能力を伸ばしていた。
陰口はエネルギーが強いから周りを惹きつけやすく、あたかも自分が人気者になったかのような錯覚に陥りやすい。でも実際は何も変わらないし、そんなことで増えた仲間なんて長くは続かない。
惨めだった。陰口を叩く暇があったら僕も腕を磨けば良かったのだ。彼を攻撃していたはずなのに、なぜか僕が傷ついていた。
僕はそんな彼を素直に尊敬している。
僕らが出会った頃の気持ちには戻れないし、戻ろうとも思わないけれど、お互いがお互いのことに興味があったのかな?ってことだけで嬉しかった。