自分には彼が何を考えていたのかサッパリ分からなかったし、みんなどう理解すればいいか分かりあぐねている様子だけど、
この断絶は藤子F不二雄の短編、ミノタウロスの皿に似ていると思った。
宇宙飛行士の主人公が不時着したのは人形の生物が牛型の生物に家畜にされている星。
その星で出会った祭典での栄誉ある最高級食材に選ばれたヒロイン。
主人公はそれを止めようとするが、ヒロインは食べられることを心から喜んで受け入れており、その価値観の断絶を主人公は最後まで受け入れられなかった。
個人的にはこの話はインカやアステカの生贄の文化をモチーフにしたものじゃないかと思っている。
そして栗城史多と、彼の支持者達のもっていた世界観というのも、これに似ていたんじゃないだろうか。
「冒険の共有」を掲げた彼の支持者は口々に勇気をもらったと言う。
雨乞いや豊作を願って神に捧げられた少年少女達も、その共同体の人々に勇気を与えたことだろう。
みんなのために、死ぬ。根拠はないけど、死ぬ。みんなはその尊い死を称える。死んで本望だったろうとすら言う。
その価値観はなかなか理解しがたいが、人の弱さが生み出す普遍的なシステムであるのかもしれない。
標高6739メートルの火山で見つかったインカの生贄の少女は、
登山家が山で死ぬのは珍しくもなんともないぞ
指を失ったときの彼の顔を忘れられない。黒く朽ちた指を誇らしげに広げて見せている。彼の表情は穏やかで、ともすると自信のようなものが見え隠れしていた。 価値観の断絶というの...