チャールズは観察を続けるうちに、繁殖に参加しない雄が存在することに気がついた。産まれてくる時点では雌雄の比はほぼ等しいが、繁殖に参加する個体の性比は少数の雄に対して多数の雌という構図が存在するのだ。
なぜ繁殖に参加しない個体が出現するのか?資源の浪費であり、種の存続に不利なのではないか?
疑問に思ったチャールズは実験を行った。その結果明らかになったことは、繁殖に参加しない雄は、成熟した生殖器をもち、妊孕性があるということだった。一方で繁殖に参加しない雄の子孫にも正常な雄が出現した。
結局、チャールズは繁殖に参加しない理由を明らかにできず、「生理的にも解剖学的にも、僅かな差異さえも発見されなかった。したがって、何らかの心理的な理由によって繁殖を避けていると考えられる」と結論づけた。
当時は増田には極めて限定的な学習能力と僅かな語彙があるだけで、人間のような精神や意識があるとは考られていなかった。そのため、チャールズの主張は科学者のみならず宗教家からも厳しく批判された。はてはチャールズに子供がいないことを揶揄して、チャールズが匿名で日記をつける風刺画を掲載する新聞も現れる始末であった。