逮捕された錬金術師は無限のエネルギーを持つ石、いわゆる『賢者の石』を研究していた。結果的に高エネルギーの石を生成することに成功したものの、そのためには人間を原材料として生贄にする必要があり、捕虜や罪人などを人体実験として利用していたため逮捕された。
彼には弟子がいた。師匠が逮捕され、研究を続けるのは自分しかいないと決意した。
しかし弟子は臆病であった。悪評を恐れ、賢人の石と改名した。また、師匠は人間を材料にしていたが、弟子は牛・猪・鶏などといった家畜を材料にして研究を進めた。
結晶を生成するところまでは成功したものの、当初の想定よりも大幅にエネルギーが少ない失敗作ばかりであった。
ある日、事故が起きた。結晶の欠片が弟子の口に入ってしまった。その時、弟子はすさまじい衝撃を受けた。材料に使用していた家畜の旨味が高濃度で凝縮されていたのである。
人参・大根・ゴボウ・里芋などの根菜を大鍋で茹で、塩・醤油・酒で軽く味付けした後に賢人の石を粉末化したものを一つまみ振りかける。それだけで肉が入っていないにも関わらず、様々な肉の旨味が染み渡った料理が完成した。