「超リアルなオンラインゲームから脱出できなくなったぞ!」と言われて昔はすげーすげーと皆思ったもんよ。
何がどう凄いのかって、まずその時代は本当にネトゲにハマりすぎて脱出できなくなっていた「元々は普通の人間」が結構いたから。
今はネトゲをやる前にそういう怖い話を聞いて置いて免疫をつけてる人が多いから元々現実捨ててる奴以外は廃人化しない。
いわば当事のネトゲは薬物に対する知識が薄い時代の阿片窟みたいなもんよ。
ゲームのグラッフィクが高品質化していく事でゲームが面白くなるとまだ信じられていた時代だ。
今はVR使っても「これは新しい所がいいね。ゲームとして他の物と比べて面白いかはともかく新鮮な刺激がいいね」としか言われねえよな。
でも、当事はVRみたいのが出来たらゲームは超リアルでウルトラ面白くなると信じられていたんだ。
そして当事は今ほどネットで人とつながる文化が一般的じゃなかった。
そんな時代に、超リアルでウルトラ面白くて他の人と繋がれちゃうゲームの中に閉じ込められる話を聞かされてみろよ。
現実とゲームの区別がついてるはずなのに、いつの間にかゲームの中で暮らすことになれていき、それでもそこは現実じゃなくて現実に戻らなければいけないと焦る気持ちに共感するはずだ。
今はもう全部日常なんだ。
こんな時代に非日常が本当の非日常となって日常を侵食する物語なんて描いても虚しいだけさ。
都会の夜空で松明を掲げるようなものさ。