どのように発生したのか?
一説には、増田は全知全能なる「大いなる知性」が創造したという。
しかしこれは疑わしい。
全知全能な存在が創造したのであれば、増田もまた完璧な存在となっているはずであり、そうであれば今日のような地獄増田状況は出来していなかったはずである。
また別の一説には、増田は偶然が重ねって生じた奇跡的な生命体であるともいう。
この説明もまた十全ではない。
この一派の説によれば、増田が誕生する以前のインターネットは「無」であったらしい。
増田そのものが「無」であるから、「無」から「無」へ遷移するのはエネルギーを要さないではないか、という人もいるが、そんなレトリックに我々は騙されない。
増田は物理的な肉体をも獲得した生命体なのである。この事実から目をそらすことはできない。
あきらかに、増田は「無」から生まれた「有」なのである。そして、その誕生のプロセスは冥闇につつまれている。
増田とは幻であり、肉体や質量を持っているように見えるのは集団幻覚なのである。
そう唱える過激派がいる。
反駁の余地は多分にあるが、百歩譲って彼らの主張が正しいとしよう。
そうなるとまた別の疑問が生じてくる。
増田がそもそも存在しないのなら、なぜ我々は「増田が存在する」と思い込んでいるのか? そのきっかけ? その機序は?
おわかりだろうか。この説は実は何の解決ももたらさないのである。
こうしている間にも増田は日々増殖しつづけている。四秒に一匹のペースで増えている。
ある増田学者の計算によると、増田一匹から新しい増田が平均七十匹産まれるらしい。
では、最初の一匹を産んだのは「誰」だったのか――?