好きな女のタイプの話をしたい。
二つある。
ひとつは、滑稽な女だ。滑稽な女はいい。高慢で、世間知らずで、調子に乗っていて、癇癪持ちで、やたらに自意識の高い女がいい。ずっと自分が十代のつもりでいるような女もいい。延々と中二病をわずらい続けていてくれたりすると、なおいい。そういう女を表面上全肯定しつつ、心の中でこっそり嘲笑うのが、俺は楽しい。嘲笑うたびに、愛が増す。
もうひとつは、卑屈な女だ。とにかく自己肯定感が低い。他人に人生を与えられて生きている。常におびえていて、おどおどしていて、こちらの顔色をうかがっていて、少し優しくするとすぐ騙されて、一度精神的にめげると一週間くらいは浮上してこないような女。あと、やっぱり癇癪持ちだとうれしい。そういう女を上手にあやしながら、時々梯子を外してやるのが楽しい。どんどん不幸になっていく様子を、横で慰めながら眺める。こっそりと心の中で愛でる。
基本的にはこっそりだが、別に声に出しても殺されたりはしない。大抵、こういう女は、口に出して嘲笑っても平気だ。ふんわりした頭をお持ちなので、言っても理解できない。そういうところも可愛いと思う。俺は、そういう女を嘲笑いながら愛でるのが好きだ。
あるいは、向こうも俺のことを嘲笑っているかもしれない。それならそれで、とてもいい。むしろ、それがいい。お互いに心の中で嘲笑いながら、馬鹿にしあいながら、それでも表面上は幸せな顔をして、じじばばになっていきたい。仮に世界中の誰もがたった一人の人間しか嘲笑うことができないのなら、俺を嘲笑うのは俺の愛した女であってほしいと思う。
俺は恵まれている。
幸いなことに、程度の差はあれ、世の中の少なくない女が上記二つのどちらかの女性像には当てはまってくれるからだ。全部の女がそうだという気はないが、通りで石を投げれば一人はヒットする程度にはいると思う。今までつきあってきた女も皆そうだった。そこがとびきり可愛いと思って、告白した。友人の評価はイマイチでも、俺にとっては世界一かわいい女たちだった。
おかげで、俺の人生は満たされている。神様がもし実在するなら、抱きついてキスしたい。よくぞこんな絶妙な世界を俺にくれた。世の中には、俺の好みの女があふれている。