名づけそむを読んだ。このオムニバスはいい意味で構成がひどい。一話目が一番破壊力があって、一気に物語に取り込まれてしまった。
だいたい一話目は読んでる途中から嫌な予感ばかりしてたんだけど、あの終わり方は尾を引くわ。余韻というか、仕方がない選択ではあるんだけど、とてつもなくやるせない。主人公である母親にしてみても、結婚を控えた娘にとっても、父親にとってさえ何かしらの棘が残ったはずだから。
本当、全ての登場人物にとってやるせない。結果としてそうなってしまったのだけれど、果たしてそれが良い選択だったのか、ハッピーエンドが好きな読者としてはもやもやが残る。せめて御祝いのメッセージぐらい送らせてもあげたらいいのに。決別こそが愛情だなんて、辛すぎる。
三話目も好きな話だった。主人公の見ている世界とミエ子さんが見ている世界が交差して、新たな知見が開ける一瞬を鮮やかに描き切っていると思う。
六話目の話は深刻な話になりそうなんだけれど、雰囲気を損なうことなく穏やかにエピローグまで運んでいくところが素敵だった。理不尽な怒りはみっともないけれど、少しでも救いがあれば、きっと何とかなるはずだって温かな気持ちになれた。そういう意味では九話目の主人公も、これから前を向いて確かな一歩を踏み出せる気がする。
全般的に希望が持てる終わり方をしているんだけど、最初と最後の話だけなんか重たい。もどかしさが読後もぐるぐるとわだかまっている原因は、絶対にこの二編にある。
出鼻を思いっきりぶん殴られて、最後にまたその感触を思いださせるようなやり口は正直ずるいと思う。なんとなしに印象に残る一冊になってしまうもの。