そういえば大学時代、ゼミの女性四人に囲まれて、「男はみんな浮気する。だからお前も浮気する」みたいなドキドキ魔女裁判があったことを思い出した。
もちろん、俺は否定しましたよ。浮気する男もいます、けれど多くの男は、特定関係者がいれば浮気しません。少なくとも、特定関係者がいる状態で、能動的に女性を口説こうとする男は、全体から見れば一部です、というような論旨で。
正義の心と知能指数を兼ね備えた、俺のゼミの四人の女史は、俺の「能動的」という言葉尻を恐るべき握力で捕まえて、「ならば受動的に浮気する可能性はあるのだな」とおおせられる。
「たとえば、たまたま友達グループの飲み会に顔を出したら、久しぶりに会う可愛い系の女性がいて」
「隣の席になっちゃったりしてー、ちょっと話してみたら、意外と気があってー」
「ふたりでケラケラ笑ってるうちに、女の子の方が『飲みすぎちゃったー』とか言い出して、少しずつ『そういう』雰囲気にじみだして」
「それで二人だけで二軒目に行って、見つめあったりわざと終電逃したり……!」
「そういうことにならないって言えるの……!!」
つまり彼女たちは、『そういう』雰囲気になるのは男の罪か女の罪かは知らないけれども、男は本質的に、『そういう』雰囲気になったら流される特性を持っていて(「据え膳食わぬは、って諺が証明してるよね!据えられたら食うんだお前らは」)、すなわち全ての男は、潜在的に浮気ものである、ということなのだそうだ。
俺は、それって反証不可能だよね、と言おうとしたが、言えなかった。女系の強いゼミだったのだ。
だから代わりに「君たちとは天地神明に誓って『そういう』ことにはならないので、安心してください」と言ったらもっそいボコられた。結局、彼女のいる男は女の出席する飲み会には行かないほうがよい、というのが、結論と言うか、教訓だった。