2021-10-02

面接に好きなモノは鬼滅の刃って娘が来た

好きなキャラクターは冨岡義勇らしい。

「ふーん。でも就労するって生殺与奪の権利を他人に握らせることじゃないですか?」

彼女の表情が凍った。

しまったなーこれはパワハラ面接として上司に怒られる案件かなーと感じたので

「ごめん。あんまよく知らないのに話し合わせようとしてしまいました」

と謝って終わらせようとした。

終わらなかった。

彼女は捲し立てるように自分そもそも間違っていて自分は今からフリーランスになるために努力すべきだと語り始めた。

面接人生相談コーナーになることは実際よくある。

人生相談コーナーになってしまった面接面接でなくなることもあるし、そこが結果的面接として成立することもある。

だが今回はどうも応募者の側からの被採用拒否という形で面接の体は失われていた。

生殺与奪の権を「せいさいよだつのけん」と何度も正しく発音し続ける彼女を前に僕はいしか赤べこのようになっていた。

もしこんな所を上司に見られて、面接の一つロクに出来ないのかと言われるんじゃないかと僕は内心ビクビクしていた。

幸いその日のその時間帯に面接を受けているのは彼女だけだったので他の面接者にこんな話をドア越しに聞かれる心配はないのが幸いだ。

心のなかで救いを求めながらも、面接官という立場が持つ傾斜を利用して終わらせられるのではという考えも浮かんだし、逆に昨今のアンチ圧迫面接の風潮を思えば銃口を突きつけているのは彼女たち被面接者の側にあるようにも思えた。

かに握られていた生殺与奪権。

会社という籠の中に飼われることを選んだせいで逃げ出すことも出来ない。

彼女のよく分からない人生プランに対して「貴方ならきっとだいじょうぶですよ」とそれらしく前向きな言葉を添えて面接から送り出した。

働くということは生殺与奪権を誰かに差し出すことである何気なく口にしたのは自分自身だが、その言葉が早くも自分の内側へと返ってきて、ゆっくりとその中煮詰まっていた刃が花開いていくのを感じた。

部屋の机と椅子を通常の会議用に戻してから、部屋の隅に裏向きにしていたホワイトボードをそっと反転させ使用予定カレンダーカラス飛ばし部屋を去った。

人事部に戻り報告をする。

今日の分は終わりました。うーん。最近の子って難しいですね。とりあえず終わりました」

ややわざとらしく愛想笑いを浮かべながら明日の予定の確認雑談をして席に戻る。

面接の内容を考えると彼女は辞退したわけだが、とりあえず面接の結果報告についてメールは出すべきだろう。

わざとらしく前向きな応援を口にしておいて定型文を後でまた送るというのもどうなのか。

いくつか案として出した不採用通知定型リストの中には、前向きに相手を送り出すようなものがあった。

今年はこれにするべきだろうか。

だが今の上司はそういったおためごかしをあまり好まない人で、不採用であるということをビジネスライクスッパリ伝えることが礼儀だと考えている。

またしても生殺与奪を握られていることを感じ取ってしまった。

心の奥に刺さった破片がチクリと傷んだ。

  • フリーランスの方が生殺与奪の権を相手に握られてない?

  • たかだが会社に就職することを 会社がお前の生殺与奪の権利を握るぞ お前が生きるも死ぬも会社次第って宣言したら完全なパワハラだわな むしろお前すごい覚悟で仕事してる割に超迂...

  • 👺「判断が遅い」

  • 鬼殺隊に志願してやってきた彼女の前に現れた面接官の一言。 「ふーん。でも就労するって生殺与奪の権利を他人に握らせることじゃないですか?」 彼女の表情が凍ったのも無理はない...

  • デリ嬢チェック:なし ジェンダーフリーで読めます

  • よく考えたら鬼殺隊って生殺与奪権を親方様に完全に握られてるよな

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