最近話題になってるジェネリック医薬品の品質問題で、もうジェネリックは使わない、先発品にしますって意見をよく見かけるけど、じゃあ先発品なら安全なのかって話。
もう散々指摘されてはいるが、今回問題となった2社については企業自体の問題なんだろうけど、薬価制度を含む後発品業界の構造的な問題も多分に品質への影響はあると思われ、それでジェネリックは信用ならんという話になっている。
一方で、それは先発品も同様に抱えている問題だったりする。保護期間が終わって後発品が出始めた後の先発品のことを長期収載品と呼ぶんだが、製薬企業が長期収載品からの利益にあぐらをかいてイノベーティブな新薬を開発しないのはけしからんとなって、長期収載品の薬価は最終的にジェネリックと同等まで引き下げられることになった。
これで負担が大きいのは新薬を次々に開発する余力のない中堅以下の新薬メーカーで、近年の業績はよろしくない。それでコストカットしていくってんなら、ジェネリックメーカーと同じ問題を抱えることになる。
なら、新薬で利益出せてて余力のある大手はどうかっていうと、そっちはそっちで利益にならない長期収載品はお荷物になる。でも使ってる患者がいるから作るのをやめるわけにもいかない(条件が整えばやめられるが)ので、別の会社に承継という手段を取ることになる。他社から承継した長期収載品を専門に扱う長期収載品ビジネスでは上記の薬価制度があるので、大手新薬メーカーと同じコストをかけてたのでは商売にならないから、冗長と思われる部分はバッサリ切られる。
まあ以下は自分のn=1の経験談なので、話半分に読んで欲しい。俺は製薬企業から安全性情報管理業務支援を受託してる会社で働いていて大手の新薬メーカーと、その会社から長期収載品を承継した新規参入のメーカーの両方と仕事をしたことがある。同じ製品に対する管理体制のあまりの違いにびっくりしたよね。安全性管理なんてメーカーからしたらコストにしかならないし、バッサリいかれた部分の一つだったんだろう。別に法令違反をしているわけじゃないが、例えば努力義務となってるところは全くというほどやってなかったし、こちらへの要求も曖昧でどんな管理コンセプトなのかもさっぱりわからなかった。まあ長期収載品の安全性プロファイルなんてもう固まってのだし、力をかける必要も無いのかもしれない。しかし、今回の件の品質問題だって安全性情報から明らかになったわけで、長期収載品だろうとジェネリックだろうと適当にして良いわけではねーと思います。
俺が見たのは一社のほんの一部署だけなんで、だからどうとは言えないんだが、あの状況を見て、承継後の先発品とジェネリック医薬品の管理体制にはそこまで差があるとは思えなかった。あと、先発品の開発企業を支援したいから先発品を選択するって言ってた人もいたんだけど、もし承継されてたら意味ないんでってことは一応お伝えしておきたい。
薬価制度がこのままならこの問題はますます深刻になると思うが、一方でない袖は振れないのも事実だろう。じゃあどうすれば良いのかって、どうすれば良いんでしょうね。まあ結局金が無尽蔵にあればどうにかなるんだろうけど。