当時俺は彼女と同棲していて、彼女は猫が大好きで毎日猫の動画を観ていた。
休憩時間のお昼休み。今日がエイプリルフールだってことを思い出すと彼女に冗談でメッセージを送った。
彼女はすぐに返事をよこし、えらく興奮した様子だった。
写真も要求されたのでネットで拾った適当な写真を送り、彼女はかわいい!とすぐに返事をしてきた。
そして、その子のことどうするの?と矢継ぎ早に聞いてきた。
「うちで飼うのはどうかな?」そう返すと彼女は歓喜し、本当に喜んでいるみたいだった。
なんだか嘘だと打ち明けにくくなってきていて、少しすると猫のご飯やらお皿やら猫のトイレやら色々な写真が送られてきた。
一通り買ってきたから準備は出来てるよ!と彼女から連絡が来た時にはいよいよ肝を冷やし、どうしたものかと内心非常に焦った。
これはもう後には引けないな、それなら…決心すると仕事帰りペットショップに寄り、送った写真に一番似ている猫を引き取った。
段ボールは軽くて子猫は大人しく、可愛かった。既に疲れているのかウトウトしていて気付けば眠りに落ちていた。起こさないよう、慎重に家まで運んだ。
家に着くと彼女が満面の笑みで出迎え、子猫を見ると声を上げそうになっていたけど寝ている姿を見て我慢した。
俺たちはスヤスヤ眠る子猫を見守り、この子の誕生日は引き取った日にすることにした。
だから今日。4月1日はあいつの誕生日だ。きっと妻がご馳走を用意している。
もしエイプリルフールがなければ俺の人生は変わっていただろう。
そう考えると、俺は嘘に感謝したいと思った。
でもね悲しい嘘がなければ 今頃は人間の子作りに励めたはずなんですよ