2023-12-18

メガネを外して鏡を映るとイケメンが映る魔法が解けた。呪いが残った

ハゲ上がりが二周り酷くなった頬のコケ亡者みたいな男がそこにいた。

床屋で髪を切っている最中だった。

伸ばしっぱなしで分かりにくくなっている間にこんなに減っていたのかと驚いた。

確認のためにメガネをかけてくれと声をかけられ、ツルを取ろうとする手が震えた。

恐る恐る顔をあげると、さっき見た落ち武者のゾンビはいなくなっていた。

ハゲ具合は自分記憶してた通りのものだった。

とはいえだいぶ来るところまで来ている。

さっき見た化け物になるまであと10年といった所だろうか。

中学に上がった頃、親父に「俺の子供なんだ。今のうちからハゲ対策はしておけよ」と薬草イラストが散りばめられたスプレーを薦められた。

「そうやってハゲハゲを気にするから変な業界調子に乗って肩身が狭くなるんだろ」

それで論破出来た気になっていた。

今な分かる。

あと5年程度でいいから、ハゲの進行を遅らせられたらと願ってしまった。

もういい割り切るんだ。

俺は汚くて臭くて格好悪くてモテようがないオッサンなんだ。

イケオジにはなれない宿命だったんだ。

運動をして体重さえそれなりに軽くしとけばそのうち俺の時代が来ると思っていたが、実際には病人みたいな面構えになって終わっちまったのが本当に悲しい。

メガネを外して鏡を見ると、なんとも栄養失調気味の冴えない男がそこに立つ。

昔は違った。

俺みたいのでもそれなり、顔面偏差値でいえばギリで50乗れるかも知れないぐらいに見えたもんさ。

それが今じゃメガネをかけていた方がまだマシに見えるんだから困っちまう。

だって電車の窓ガラスの中にさえ少しはまともな顔の自分がいないんだもんな。

一番マシな顔つきがこんなにブサイクなんじゃもうどうしようもねえよ。

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