抜き終わった時に達成感はあるし、サッパリもする。掛け布団の感触をダイレクトに味わう感覚も心地良い。それでも地道な作業に爽快感はない。
植わった芋を折ることなくズボッと引き抜きたいのにチマチマ周りを掘っていくような、そんなもどかしさがある。
脱毛のように漸次的ではなくカミソリで剃るかのように一瞬にして、しかも根っこが残る気持ち悪さもなくサッパリしたい。
こんな時によく妄想をする。
身体の全てを意のままに操れるようになって、毛穴を開きまくって全てのムダ毛を一瞬にしてハラハラと落とす。これは良い。しかし今一歩爽快感が足りない気もする。毛根のブヨブヨが張り付いて上手く落ちないかもしれない。
ムダ毛だけを実体化させたまま、残りは透明というか透過人間みたいに変身してはどうか。その瞬間に一瞬空中でとどまった全てのムダ毛がフ……と床へと舞い降りる。再び実体化した時には綺麗サッパリツルツルの身体になってる。抜きづらい目玉や唇付近の産毛や余分な眉毛まで綺麗サッパリだ。これはいい。
それにこれならついでに顔の脂なんかも除去してさっぱり出来る。なんなら毛母細胞や皮脂腺ごと落としてしまえばいい。本物の永久脱毛になるし、風呂にピットインせずとも前髪がベタつかない。
全部の皮脂腺がなくっても困るかもしれないから、集中してる部分に絞って1,2割を残して間引くのがいいかもしれない。
成果物もまじまじと観察したい。足元に舞い落ちるムダ毛と滴り落ちる皮脂が混じってベタベタになってはいけない。フィルターのような網でも張って、その下に桶でも置いておけばいい。皮脂腺や毛母細胞までもが、外科手術による損傷が一切ない姿でそっくりそのまま観察できる。肌に埋まっていたありのままをまじまじと観察すれば、アリの巣を観察出来るジェルのキットを眺めるような喜びがあるに違いない。
しかし懸念点もある。透過人間が重力に捕まるかは分からないが、もし床と透過した身体が重なったまま実体化したらどえらい事になってしまうかもしれない。
透過人間になる前にテーブルに乗って飛び降りた瞬間に変身、着地する前に戻らないといけない。空気中の塵も脅威になるはずだ。眼球や血管に混じってしまったらとてつもなく気持ち悪い。これはブレゲのクリーンルームよりも厳格な、無菌室のような所でやらねばならない。
こんな妄想をよくする。
透過を解除するときに一気にやるんじゃなくて、一部分から実体化していって、そこにあるものを「押し出す」ようにしたらどうか 体の断面で外界と触れることになって具合悪いかな あ...