小さい頃から太っていて男の子によく間違われていた。普段からパーカーにジーンズで男子とよくケンカをしたし外で遊んだりもしていたから仕方ない事だった。休みの日スカートをはいてみた。かわいい格好に慣れておらず、なんか小っ恥ずかしいけど嬉しかった。そんな日に限ってクラスメイトに会ってしまう。腹を抱えて笑われて、二度とこんなもんはくもんかと思った、そんな小学3年生の記憶。よくある話でよく聞く話である。
それ以降ずっと男っぽい服装にして髪も短くしていた。男みたいだと思われる方が楽だった。制服はみんな着るからどこか安心していた。自分の意思で着るものじゃないから笑われる事はない、と。
20代になってもどこか抵抗感があった。化粧も髪を伸ばす事も恋愛も。やってみたいと思う気持ちはあるけどそんな事をしたら笑われるのではという気持ちの方が強かった。
当時の記憶は自分でも気づかないようなところにいて、たまに顔を出してきた。その度に私は無意識のうちに当時の私に戻っていた。
転勤を伴う仕事につき、いつの間にか30代になった。普通に化粧をして髪を伸ばしスカートもはく。歳をとっていい意味で鈍くなってきたのかもしれない。いろんな環境で過ごすうちに少しずつ少しずつ「気にする事はない」という感覚が馴染んでいた。その結果たまに出てくるソレの存在に気づいた。彼女は全然気にしてない顔をしてたけど、心の中でしっかり傷ついた様子だった。そっかそうだったか、と彼女の背中をさすった。なんだか少し安心した。