彼は独自にミステリーを研究していて、2周目からは犯人の名前やキーになるセンテンスに線を引いたり丸で囲んだりする。
一緒に住み始めて本を貸してもらおうと思った時に知った。
曰く作家や時代ごとに伏線の貼り方の傾向があるそうな。さりげなくも印象に残る仕掛けはピンクのマーカーを使っていた。
ネタバレ覚悟でその解説を聞いたことがあるが、主人公以外で何番目にセリフがある人がどうとか、この作家は最初は名前だけ誰かに言わせるキャラは犯人にしないとか、なるほど一貫性があり、ネットで調べてもそういう考察をしてない話もあって関心していた。
彼は去年亡くなった。
救急車に乗る前に亡くなったそうで、受け入れ先がなくとかじゃなく、無駄に何かを恨まなくて良いのが救いだった。
落ち込んで誰にも言えなかった。
彼の話を聞かれた時はいつも犯人の名前に印をつけるから読めないんだよという話で笑いを取った。そうすれば帰った時にいてくれそうな気がしていた。
家には本しかないので読み始めた。
ネタバレを食らうのも癪なので、既読かつベタなそして誰もいなくなったを手に取る。登場人物紹介のところから丸をつけてあって吹き出してしまった。
笑っても泣いても、彼と共有したかったという気持ちは消えないけど、私にとっての彼の生き方を示すものがあるのはホッとする。
その方も「読みたかったけど印を見るの怖いです」と言っていて笑った。
増田の名前に丸が付けてある展開かと思った。
お別れしても本人が手を加えたものが残るのはいいね
そして彼もいなくなった