ミジンコ(Daphnia pulex:写真)が、有性生殖能力を失い雌だけで世代を維持していること、遺伝的多様性が極めて乏しくたった4タイプの遺伝子型(クローン個体)しか分布していないこと、それらすべてが別のミジンコ種との雑種であること、在来種ではなく北米から侵入した外来種であることを明らかにしました。
北米には突然変異で生じた有性生殖能力を失った絶対単為生殖型のミジンコが生息し、北米大陸で分布を広げていることがわかっています。絶対単為生殖型のミジンコは雄を産むことが出来、この雄が有性生殖を行う循環単為生殖型のミジンコと交尾すると1:1の頻度で絶対単為生殖ミジンコが生まれます。すなわち、有性生殖を行わない絶対単為生殖型の雌から産まれた雄が、有性生殖を行う循環単為生殖型のミジンコを絶対単為生殖型へと変えていると考えられています。雌だけで繁殖する集団が、雄による遺伝形質の伝搬によって造られて行くのはなんとも皮肉です。
日本に広く生息しているミジンコの多くは、700〜3000年前に日本に移入したたった2個体の直系子孫であると言う事ができます。
絶対単為生殖型の生物は、交尾による遺伝子組み換えがないので、有害な突然変異が蓄積したり病気に感染しやすいなどの理由でいずれ絶滅すると考えられています。絶対単為生殖のミジンコがいくら雄を産んでも、日本にはそれを受け入れる有性生殖を行うミジンコ(D. pulex)はいません。もし、新たな移入個体がなければ、ミジンコは日本からやがて消えてしまうことになるでしょう。
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press20150407_01web.pdf