在宅ワークの昼休みにうとうとしていたら、金縛りに遭った。若い人に多いとどこかで聞いたことはあったが、アラサーでもなるらしい。
ベッドでは動けず、目も開けられない中でシャワーの音が聞こえた。今は部屋に誰もいないのに、はっきりと誰かがシャワーを浴びる音が聞こえる。怖くなり辺りを見回すと、そこは自分の家のようで自分の家ではなかった。青を基調としているはずの寝室が黄色い。もしかしたら、パラレルワールドに来てしまったのかもしれないと思った。
いまの自分の意識の他に、ここでの自分の意識があるようで、数日後に同窓会が控えていることを憂鬱に感じていた。それでも会場は好きな店らしく、「私」はメニューを思い浮かべることに楽しみを見出していた。意識をもう少し探ると、この部屋はいまの部屋よりも少しだけ広く、リビングまでもが黄色で統一されていることがわかった。好きな色は緑なのだけども。
シャワーの音が止まる。出てきたのは、いまの世界の同居人だった。数年同棲してこの先の望みが薄い恋人と、この世界でも一緒にいるんだなあと落胆しながらも少し安心した。
私の姿を見ると、この世界の彼は言った。「四千(頭身)の都築くんと飲みに行ってくるわ」もちろんこちらの世界で彼は都築さんと面識があるわけでも芸人というわけでもない。有吉の壁で見るくらいの距離感だ。すぐに彼が出て行き、鍵がガチャリと閉まる音が確かに聞こえた。
本来誰もいないはずの空間に人がいなくなったことに安心し、金縛りにじっと耐えているうちに目が覚めた。単なる明晰夢かもしれないけれど、今とほんの少し違う世界の存在を期待するのは悪くない。