なにせ、誰からもディスプレイを見られないし、インターネット閲覧履歴が会社に記録されるわけでもない。
まあでも、そんなことをやっていたら成果は上がらないわけだから、どこかで帳尻を合わせないといけなくなる。
昨日はまさにそんな日で、溜まった仕事をいくつか消化する必要があった。
ディスプレイをしばらく眺めては、なんとなしに立ち上がってキッチンに行き、
冷蔵庫の扉を開けて中を覗き、でもお腹は空いてないし喉も乾いていないから扉を閉じる、
ということを無意識に2, 3回繰り返したところで、一体何やってるんだと我に返った。
お腹は空いていないので溜まらないものが良いが、かといってガムが欲しいという感じでもない。
そのとき、以前歯医者でマウスピースを作ったことを思い出した。
歯ぎしり防止用だったが、つけるのも面倒だし歯ぎしりも多分減ったしと使わなくなり放っておいたものだ。
探すとすぐ見つかったので、さっそくつけてみた。
マウスピースをつけると、歯に感触がかえってくるためか、ぎゅっと強く噛めるようになる。
口寂しい気持ちもなくなった気がする。とりあえずこのまま仕事をしてみることにした。
すると驚くことに、仕事にスッと取り組める。
一度やりだせばある程度は継続できる質なので、溜まっていた分と他にやるべきことを一気に片付けた。
これでまたしばらくサボれることだろう。
しかし不思議である。歯を食いしばるというのはやる気に良い影響があるのだろうか。
考えてみれば、歯を食いしばるというのは、根性で辛さに耐えるくらいの意味の慣用句である。
実際に歯を食いしばることで、その意味の通りに根性を発揮できるようになったのかもしれない。
ひょっとして、無意識に食いしばりによる根性発揮を求めたことが、口寂しい気持ちとして伝わってきたのだろうか。
面白いがわかりづらい伝え方だな、と思った。
ただ、歯を食いしばるのは良くないこともあるらしい。
マウスピースがあれば歯が削れるのは防げるものの、どっちにしろ顎の関節には悪いし、
万人向けの方法ではないだろう。
でも、辛いときに文字通り歯を食いしばる必要があるのだとしたら、
その補助具としてマウスピースを使うのは良いことのように思う。