長時間揚げた細麺がパリッパリでなかなか汁を吸わないから、食べている間ずっとパリパリ感を残している。
口に入りきらなくて麺の先が顔に当たり、ぽきぽきと音を立てるのが楽しい。
おおきめに切ったちくわは魚の味が濃くて、いい味のアクセントになっている。
店の看板メニューであるジャンボ皿うどんを頼むと、薄いブルーの巨大な皿に家族五人でも食べきれないほどの量がのってやってきた。
ピンクのかまぼことブルーの皿のコントラストが、実によく映えた。
日曜日の夜、家族みんなで皿うどんを食べに行くのが習慣になっていた。
本当に美味しくて、小学生の頃は好物を聞かれれば必ず「皿うどん」と答えていたくらいだ。
父の親友は、穏やかでいつも笑っていて大勢の友達に囲まれているような人だった。
親友が念願の店を出したというので、父は家族全員を連れて通っていたのだ。
気難しい父だが、親友といるときはいつも朗らかな笑顔を見せていた。
人見知りの母も、夫の親友とはよく話し、大きな口を開けて笑った。
その店は、味と店主の人柄のおかげでいつも賑わっていた。
店を出して数年後、父の親友は亡くなった。胃癌が発覚してから、あっという間だったという。
葬式から帰ってきた日の夜、父は号泣していた。母も泣いていた。
小学生だった私には、ほんのちょっと前まで元気だった人が亡くなるという現実が受け入れられなかった。
しばらくの間、父は落ち込んで、それから親友の話題を口にしなくなった。
私は小倉の焼きうどんが食べたい。 駅前の商店街にあるお婆さんがやってた、だるま堂。 素朴な味で癖になると言うよりもどこまでもどこまでも優しい味。 地元民ではないが出張時に...