北極を日本の領土とするためオリンピック選手兵団の投入が決定されたのは、開催まで半年に迫った頃だった。
その頃に東京を出発した令和誠意大将軍はロシアから北方領土を奪還し終え国際問題の真っ只中にあった。
帝都元年、IOCが日本をオリンピック開催不可能国家として永久追放したその日、都知事独裁国家TOKYOは日本からの独立を宣言し、TOKYOオリンピック開催へ向けて動き出していた。
世界非武装宣言によりあらゆる火器の所持が禁止されたこの時代に、鍛え上げたアスリートの屈強な肉体を止められるものなど誰もいない、私達はそう思っていたし、実際、帝都新聞は大本営発表とも見まごうほどの戦果を日々伝えてきた。
だがそこには一つの見落としがあった。
その日、北極は黒夜だった。
氷の世界を無数の聖火型LED携帯進軍灯具が照らす中、本当の闇が突然、訪れた。
EMPだ。
あらゆる兵器が禁止されたこの時代に、ただ一つEMPの使用が許可される存在、ブラインドサッカー。
機械の目という不平等をスタジアムから消し去り本当の闇を生むためだけに用意された舞台装置、それが氷と闇に閉ざされた時間を作り出す。
その一瞬をつき、彼らは現れた。
のちの聖ロンギヌス選手騎士団の前身、国際パラリンピック選手兵団である。
闇の中では誰も彼らに敵わない。