たつきくんへ
いやあ、君を信じでよかった。2年間信じてたんだ。
じつはね、10話までは見るの苦痛だったんだよ。なんか画面が暗くて主要キャラの赤色が見づらくて、ストーリーも緩慢だったと思ってたんだよね。
主人公たち御一行は水不足のジリ貧でカワイソで見てるのが辛かったよ。なんか謎は散りばめられてるけど、あまり前に進んでいる感じがしなかった。
このころぼくは「ああ、たつきくんは終わったんだ」と思ってたよ。かつての熱狂はけものフレンズという特異点で奇跡が起きてただけだったと絶望しながら惰性で見ていたよ。
それで、11話。あそこから、きみの真価が発揮されてなるほどと思った。これまで暗かった視界が一気に開けるカタルシスを感じたよ。
きみはまだ、枯れてない。すごい作品が作れるすごい監督なんだって、誇らしく思ったよ。
君がすごいのは主人公のピンチを我が物のように感じるくらい物語の中に視聴者を引き込んでいること。正直最終回前はドキドキして、手に汗握ったよ。そして、最終回を見て泣いた。
そして安っぽくなりがちな「自己犠牲」を物凄く美しいものとして表現できることだね。
こうして困難を乗り越えて初めて、すごくキャラたちに親しみを感じた。
物語の結末を知ってから、エンディングテーマがメチャクチャ好きになったよ。
きみは、けものフレンズの焼き直しをきちんとケムリクサでやってくれたね。
まず主人公は自己犠牲のためにピンチに陥り、次に主人公を助けるためにこれまで出会った仲間たちが集結する。そして最後に、主人公は救済されつつピンチを切り抜ける。物語は更に続く可能性をのこして終わる。
いいんだよ、これで。ぼくたちが待っていたのはこういうアツい展開を丁寧な構成で描き出してくれることだったんだからね。
これで、このやり方は2回めなんだけれど次はどんなものを見せてくれるのか、楽しみにしているよ。
蛇足だけれど、けものフレンズ2は骨格を失って想像で作ったエセ剥製みたいだし、ケムリクサは骨組みに別の毛皮をかぶせて作ったキメラみたいだった。
だから、きみの場合はキャラとか背景とかを他の人に作ってもらって限られた枠の中でオリジナリティを発揮するほうが良いものが作れるんじゃないかな。困難がよい仕事をもたらす稀有なタイプの人だと思う。