通常の、子供が殺害された事件では、マスコミは残された親・保護者のインタビューを流し、我々は被害者とその家族に深く同情し、犯人に強い怒りを表明する。残された家族と一体となって犯人に怒る。
虐待死事件の場合、親・保護者が加害者であり、残された家族のインタビューをマスコミが取材し放送することはほとんどない。被害者に同情はするが、怒りの共有元となる家族はいない。それでも怒らなねばならぬと怒ろうとするから、その怒りもとっちらかったものとなる。事件前には、虐待問題も児童相談所の問題も里親・養子の問題も考えたことのない人達ばかりなのだから当然だ。
無責任に怒る連中に「だったらあなたたちが引き取って育ててあげればよかったのに」と言うと黙りこんでしまう。テレビのワイドショーの高収入タレントたちは「私なら引き取って育て上げられたのに」とは絶対に言わない。「自分の子供は自分が育てるのが当然」「他人の子供は育てたくない」という意識があるからだが、こんな現状では絶対に不幸に育つ人間はなくならない。