朝、いつものように電車に乗って会社に向かっていたんだが、4駅目を過ぎたあたりで、急に激しい便意に襲われた。
何が悪かったのか。昨日の中華居酒屋でしこたま飲んだ紹興酒が悪かったのか、帰ってから食べた押し寿司が古かったのか、わからないが、便意とも、腹痛ともつかないものに意識全体が奪われて、寒気がするくらいだった。
これくらいはマイペンライ、会社のウォシュレット付きトイレでいつものように快便すればすべて丸く収まる、と思っていたのもつかの間、やはりこのまま我慢するにはあまりにも強い、これは便意なのだと確信した。いますぐ出したい、出さなければ腹が壊れる、というか、もう勝手に限界のところまで下がってきている、何かが、という状態だった。
次の駅でホームをダッシュしてトイレに駆け込むしかない、というようにエマージェンシープランを変更して、降りる決意を固めたのはいい。
だが、ドアの傍に立っている大学生らしい男の背負っているホモランドセルで、入り口全体がふさがれている。
電車が止まったのはいい。降りようとして自分が動き始めたのはいい。だが、やっぱりホモランドセルが邪魔になっているせいで、降りる人の流れに加わって自分も降りることはできなかった。
再び動き始めた電車の中で、義憤ども諦めともつかない気持ちを味わっているうちに、尻のあたりがなにか生暖かくなってくるのが感じられた。
暖かさは意外に気持ちよかったが、そうも言ってられない状況になった。自分でもそれとわかるほど臭いがする。でも動くことはできない。
腿と膝のあいだを通って、生暖かい液体が降りてくるのを感じる。
次の駅で電車が止まったところで、すいません、すいませんと繰り返して、ホモランドセルを手でのけながら、やっとの思いでおりて、駅のトイレに駆け込んでパンツを下すと、液体に混じって実が出ていた。
パンツだけを捨てて、水でズボンをゆすいで、反対方向に向かう電車に乗って、着替えに戻ったのだが、電車の中で臭いが漏れていないかどうか、気になって仕方がなかった。
いや最初の駅の時点でおしのけて出ればよかったやんと思ったがおしのけるために力こめるとヤバイくらいだったのか?おりますと叫ぶことすらできないくらいの