彼のお母さんの体調が悪いらしい。病院で精密検査を受け、入院するかもわからないレベルらしい。
私はどう声をかければいいのか分からなかった。心配な気持ちもわかるけど、あまり無理しすぎないようにね。としか言えなかった。
私は既に祖父と父を亡くしている。祖父は小学校高学年、父は中学生の時。
心臓の動きが止まり、ピーーーーというあの機械の音。お医者さんが心臓の音を聞き、瞳孔が開ききっていることを確認して「○時○分、ご臨終です」と言う。全て10年以上前の記憶。うろ覚えだ。
人は死んだら生き返らない。
祖父が亡くなったときも、父が亡くなったときも、悲しくて涙が流れたが10分もしないうちに止まった。
泣いたって生き返らないから。
自殺とかだったらまた違ったのかもしれない。
私の場合はどちらも病死だった。その時の私はクソガキだったから、医者から直接病名などを聞いたわけではない。
母が親戚に話しているところを聞いて知った。音楽を聴いているふりをして、少し音量を下げて聞き耳を立てていた。
「早く元気になってね」
何度言っただろう。
祖父はモルヒネを投与して1カ月ほど持ちこたえたが、父は3日で亡くなった。
悲しいという感情は確かにある。しかし、心のどこかでもう戻ってこない、もういないと思っている。
人はいつか死ぬ。それが生まれてすぐかもしれないし、しわしわのよぼよぼになってからかもわからない。
私は人の死に対して疎いのだろうか。何かの感情が欠落しているのだろうか。
お母さんが心配な気持ちは分かるが、だが私は自分の母とそこまで仲が良くないから理解がしにくい。
父もある日突然病気発覚!というわけではなかった。
近しい人が死んで悲しいときに涙って簡単に出ないものだよ。 あなたのなかでまだお祖父さんお父さんがなくなったときの涙が固まって出てきてないんだよ。 そんなことを忘れて暮らし...