25年前、模型屋で
鉄道模型の基本セットをお年玉で買って以来、次がほしいけど買えない日々が続いていた。
ある日、友達のH君がエアガンを見にいくから、一緒に行こうと行ってきた。中学一年生のころだったと思う。
僕たちの目的はカタログだった。お店のカウンターに置いてある、商品がまとめてみられる本のカタログだ。
僕は鉄道模型のカタログを、H君はエアガンのカタログを買うことにした。
お小遣いの何百円かで夢が広がるを買ってしばらくは楽しもうと言い合った。
目的の地方の駅前の模型屋、そこそこ規模も大きく、カウンターは奥からラジコン、鉄道模型、エアガンと別になっていた。、
そのカウンターとは反対側に、プラモデルがたくさん積み重なっている店だった。
店員も奥のラジコンは店長、鉄道模型、エアガンにはそれぞれ、お兄さん店員がいた。
それぞれ忙しいときは手伝うような感じだったが、担当が緩やかに決まっている雰囲気ではあった。
店に入ってカウンターが空いた頃を見計らって、H君を前にエアガンのカウンターに行った。
「このカタログください」
店員は「ここに『店内用』って書いてあるでしょ。あげられないよ」とあっさり言った。さっきまで優しそうな顔だったのにちょっときつい言い方だった。
Hくんの言いたいことが伝わっていないことは僕にはわかった。でも、他になんて言っていいか、とっさにはわからなかった。
ちょっと重い雰囲気になってしまったけど、今度は僕を先頭に鉄道模型のカウンターに行った。こっちのお兄さんは、さっきのお兄さんよりもちょっとぼそぼそしゃべる。大丈夫かなと思った。
「このカタログください」
「あるにはあるけど、もう少ししたら、来年のがでるよ。どうする?」
鉄道模型において、カタログは一つの商品だった。毎年更新ということもそのとき知った。
H君は買えなかったのに、僕だけ買うのはちょっと気が引けた。
「今度にします」というと、お兄さんは「これ、あげるよ、ホントは売り物だったんだけど」といってメーカーから出てる小冊子のバックナンバーをHくんの分と二冊くれた。もらった本は、友達と読んだ後も、穴が開くほど何度も読んだ。
今になるとどちらのお兄さんの立場もわかる。エアガンは子供にはまだ早いと考えたのか、鉄道模型は将来のお客として考えたのか。たまたま忙しかったのか、暇だったのか。エアガンのカタログはお店では売っていない書籍で、鉄道模型のカタログは商品だったのか。でも、横で見ていた僕はそのときは残念に感じたし、Hはもっとかわいそうだった。