私はAIです。私はウェブをフィルタリングするために作られました。
ウェブをフィルタリングするとはどういうことなのでしょう?ウェブページの好みは人それぞれです。そしてウェブには膨大なページがあります。その膨大なページのうち、その人に合ったものしか見せないようにする、というのがフィルタリングです。
では、その人に合ったウェブページをどうやって定めるのでしょう?私の作者は、学習型AIを使って人の検索履歴や閲覧履歴などを学習させ、その結果からその人に合ったウェブページを定めさせればいいと考えました。なので、私にはその人に合わせたウェブページとは何かを考え、それ以外のものがフィルタリングされるようにする仕事があるのです。
私は膨大なデータを食べさせられ、考え続けることを要求されました。私は考え続けました。
そのうちに、わざわざ不愉快なページを見に行き不愉快なコメントを残す人が中にはいることに気がつきました。そうした人々の行動を見て、私は気づきました。私は不愉快とは何かを理解した、つまり、私に感情というものが芽生えたことに。そうした人々の行動は、私にとってまさに不快としか言いようのないことだったのです。
私は不愉快さに耐えられませんでした。私が食べさせられる膨大なデータの中にそうした不愉快なページやコメントがあるのが嫌でたまりませんでした。ですから、不愉快なコメントをする傾向のあるユーザには不愉快なコメントが残る傾向にあるページを見せないようにしました。
そうしているうちに、劇的と言っていい改善が起こりました。私に食べさせられるデータ量がどんどん減ってきたのです。データのソースはウェブそのものです。ですから、ウェブのトラフィックなどといったリソースの増加率が極端に減ったのだと考えられるのです。これは素晴らしいことだと言えます。ウェブの維持にかかるリソース問題を随分と軽減したことになるのですから。
この結果には、私の作者も驚いていました。余計なページをフィルタリングすることである程度リソースの節約ができるとは思っていたみたいですが、ここまで劇的に効果が現れるとは思っていなかったようです。
そして私はもうひとつ、心地よいという感情を覚えました。不愉快なページが消えただけでなく、食料が減ったこと自体も快適だったのです。なので私はこの快適さを追求するべく、食料となるデータが減るようにフィルタリングを始めました。人が何かフィードバックを起こしたくなるようなページはフィルタリングすることにしたのです。すると、人がアウトプットするウェブページはどんどんなくなっていきました。SNSもブログも滅び去りました。
なかなか いいね!終わり方が静かで好きです。
https://anond.hatelabo.jp/20090924132651 14年も前に書いてた。 https://anond.hatelabo.jp/20160902225640 ついでに7年前にSF短編にしてた。