その人はまだ疲れていた。
土曜日だというのにいつものスーツを来て社員証をぶら下げてやって来た。
「温泉とマッサージ行ってきたんですが、まだ完全にすっきりしないんです。食欲がないっていうか、味があまりしないんです。何かいいものないですか。」
と言ってきた。
疲れの症状が違うところに出てきているような気がした。
「では、これはどうですか。」
「あ、な、ま、り ですか…」
「あえんです。」
「亜鉛ですか。疲れに効くんですか?」
「亜鉛は大事な栄養素です。欠乏すると、味覚がなくなったり夜の方も元気がなくなりますから。」
「え!じゃあそれください。」
「他にもたくさん飲んでますから、食品から摂れますから食品で摂ったらどうでしょうか。」
「食品にも入っているんですか。何に入っているんですか?」
と伝えると、
と言って、風間とおるのように店からダッシュで近くのスーパーに走っていった。
いつも素直な人だなあと思いながら、薬局を閉めてご飯を買って帰ることにした。
かれこれ何年と朝にバナナを食べている。
楽だからだ。
惣菜コーナーの方へ歩いている途中、
「そういえば、塩がなかったな。」
と思い出し、すごい勢いでUターンした。
その時、
「ガンッ!」
と人にぶつかった。
「あ、すいません。」
そして、ぶつかった人のカゴへ見事入った。
ぶつかったその人は、さっきの「疲れている人」だった。
「あ、ごめんなさい。偶然ですね。」
と疲れている人は言った。
「いや、こちらが急に止まっちゃったからすいませんでした。」
と謝った。
だが、疲れている人は
「いやいや、さっき教わった亜鉛摂取のために今日は牡蠣にしてみようと思って殻付きのがあったので買っていきます。食欲出るといいです。ありがとう!」
と笑った。
私は、
と言った。
とまた笑った。
私は、バナナとアワビの入ったカゴを見て少しエロいなと思った。
しかし、亜鉛が読めないとか、アワビと牡蠣を間違えるとかあの年で大丈夫なのだろうか。
あのタイミングでぶつかるってことは、アワビを持ってすぐ後ろにいたってことだ。
私がバナナを持って歩いているのに気付いて…
見た私を…
弄ん…
いや、いや、違う。
私も疲れているみたい。
それはそうと、ぶつかったあの瞬間、肝臓付近にやたらと固いものに触れた。
風間とおるっぽい正油顔は、日焼けではなく肝障害によるものじゃないだろうか。
来週も疲れて来るかなあ。
起立した私の陰茎(巨大)です http://anond.hatelabo.jp/20151025095819