2015-05-07

DVのおかげで私は私らしく生きられる

私はDVを受けている。

始めはキスの時に耳や指を強くかじる程度であった。

それはやがてエスカレートして、暴力と呼べるものになっていった。

家に帰ってすぐに手を洗わなかったと殴られた。

苦手なブラックオリーブを残して蹴られた。

いつも体のどこかが痛む。

その痛みが私に生の実感を与えてくれる。

私は収入のない文学部大学院生である

彼女丸の内で働くOLである

私達は同棲している。

つまるところ私はヒモである

しか創作するヒモである

彼女セックスの間に私を殴ることを好む。

抗えば折れてしまいそうな、細く白い腕で私の目を潰す。

私に跨って、私の頬に肩にみぞおちに拳を落とす。

私は苦痛の中で射精する。

絶頂した彼女は、恍惚とした表情で私の首をしめる。

そして私は一度死んで生き返る。

目が覚めると私はペンを取り詩を紡ぐ。

眼球の内出血がまるで黄昏時のように視界を赤く染めている。

キーボードを叩いて小説を書く。

私は生きている。

生きているから何かを創れる。

創れるのは生きている間だけだ。

打撲痕の熱に突き動かされて、私は目の前の紙に心の蠢いた傷跡を残す。

今、この時だけ、きっと私はすごく美しい世界と繋がっている。

そこからこぼれ落ちてくる言葉が、虚空に溶けて消えてしまう前に。

私はやがて死ぬだろう。

誰もがいつか死ぬ

誰もが生き疲れた頃に死ぬと思っている。

私はもうすぐ死ぬ

彼女が私を殺す。

お互いにそれは承知している。

彼女は私を愛してくれている。

私の言葉を、私の詩を、私の顔を、私の声を、私の涙を、私の血を、私のリンパを。

私の全てを彼女は愛おしんでくれる。

私が二度と書けなくなったとしても、私の遺したものを生涯愛してくれる。

から私は彼女のために創り続ける。

私には未来過去もない。

今、創る。

計画も損得もない。

でなきゃ、何も書けやしないさ。

歪んでいる?

そうかもしれないね

だけどね、人生刹那ものだよ。

それを忘れて生きるくらいなら、死んだほうがいい。

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