私はDVを受けている。
始めはキスの時に耳や指を強くかじる程度であった。
それはやがてエスカレートして、暴力と呼べるものになっていった。
家に帰ってすぐに手を洗わなかったと殴られた。
苦手なブラックオリーブを残して蹴られた。
いつも体のどこかが痛む。
その痛みが私に生の実感を与えてくれる。
私達は同棲している。
抗えば折れてしまいそうな、細く白い腕で私の目を潰す。
そして私は一度死んで生き返る。
目が覚めると私はペンを取り詩を紡ぐ。
私は生きている。
生きているから何かを創れる。
創れるのは生きている間だけだ。
打撲痕の熱に突き動かされて、私は目の前の紙に心の蠢いた傷跡を残す。
今、この時だけ、きっと私はすごく美しい世界と繋がっている。
そこからこぼれ落ちてくる言葉が、虚空に溶けて消えてしまう前に。
私はやがて死ぬだろう。
誰もがいつか死ぬ。
私はもうすぐ死ぬ。
彼女が私を殺す。
お互いにそれは承知している。
彼女は私を愛してくれている。
私の言葉を、私の詩を、私の顔を、私の声を、私の涙を、私の血を、私のリンパを。
私が二度と書けなくなったとしても、私の遺したものを生涯愛してくれる。
今、創る。
計画も損得もない。
でなきゃ、何も書けやしないさ。
歪んでいる?
そうかもしれないね。
それを忘れて生きるくらいなら、死んだほうがいい。
とりあえず射精しておけば村上春樹っぽくなるという風潮