彼女は美しく、その「趣味」がすこぶる上手いうえかなり金をかけていて
アマチュア大会でも記録を残す有名人ということで、私は最初彼女に憧れていた。
歳が近いということでなにかと行動を共にするようになり
休日のたびに一緒に出かけるまでになった。
彼女には一般常識やモラルが無く、趣味以外の話は全く弾まなかったし、
趣味と同じくらい、他人の恋人にちょっかいをかけるのが好きだということと
趣味に注ぎ込んでいる大金は出来ちゃった結婚の夫が稼いでくるなけなしの生活費で
仕事で疲れた夫にふりかけごはんを食べさせて趣味を続けていると知ってしまった頃には
私の彼女への尊敬と親しみは、すっかり無くなってしまっていた。
「昨日、あの子の彼と“遊んだ”の。あの子みたいなブスよりも私の方が良いんでしょうね」
人気者の彼女はそれから「友人に裏切られた悲劇のヒロイン」として私の悪口を言いふらすようになった。
私の弁明など誰も聞いてはくれなかった。
悪意に満ちた視線達に、どうにも居辛くなった私は、その趣味自体をやめてしまった。
彼女と同じ名字で、彼女と同じ場所に住む、彼女の息子と同じ歳の息子を持つ男性と仕事の関係で知り合った。
彼の奥様はバカだけど美人で、料理ができないことと、やたら実家の母親に会いに行く甘えん坊なところは玉に瑕だが
子供の将来の為に一生懸命に貯金を頑張ってくれる良き妻らしいので、おそらく彼女とは別人だろう。
いつか彼と飲みに行く機会があったら、昔話をしてみてもいいかもしれない。