2012-08-03

昔、バイク埼玉から福島まで旅行をしたことがある。

その頃のオレは2年目のシステムエンジニアで、彼女もいないで

結婚もせず何者でもなかった時だった。

自分を説明する材料がなにもない時だった。

バイク免許学生の時に取った中型の免許だ。

バイクを買う金もないオレは新宿の小さなバイク屋で

レンタルバイクを借りて2泊3日の旅をしたのだ。

目的地は特に決めず、福島さびれたキャンプ地で

野宿をした。シーズンオフのため、だだっ広いキャンプ場で

たった1人で夜を明かした。

あの吸い込まれそうな闇の中でたった一人で寝るというのは

普段味わったことのない恐怖であったが、不思議とワクワクして

いたのを今でも忘れることができない。

会津城まで向かおうとしたのだがスケジュール的に無理があったので

福岡空港ちょっと見てそれで帰った。ただそれだけの旅だった。

途中で寄ったガソリンスタンド対応してくれたおじいちゃんのなまり

強すぎて何を言っているのかはよくわからなかった。

2日目の朝がひどいどしゃぶりで

かっぱを来たまま心の中でワーワー叫びながら必死アクセルを回し続けた。

ひどい雨の中なぜかゼロの使い魔OPYOU'RE THE ONE」を口づさんでた。

特に好きなアニメではなかったので今思うと不思議な話だ。

体は汗でギトギト、炎天下の下体は黒くなったのに不思議と心が真っ白になる感覚を覚えた。

心が綺麗になっていく感覚だ。

その時にオレが思ったのは極限状態に追い込むと人間シンプルになるってことだ。

炎天下で晒されて汗だらけのなかで水が飲みたい涼しいところにいたい風呂に入りたい

というシンプルな欲望が頭の中をしめて

普段考えている雑念が消えるのだ。

それは自分自身が今、生きてるってことを本当に気づくってことだ。

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