結婚もせず何者でもなかった時だった。
たった1人で夜を明かした。
あの吸い込まれそうな闇の中でたった一人で寝るというのは
普段味わったことのない恐怖であったが、不思議とワクワクして
いたのを今でも忘れることができない。
会津城まで向かおうとしたのだがスケジュール的に無理があったので
福岡空港をちょっと見てそれで帰った。ただそれだけの旅だった。
途中で寄ったガソリンスタンドで対応してくれたおじいちゃんのなまりが
強すぎて何を言っているのかはよくわからなかった。
2日目の朝がひどいどしゃぶりで
かっぱを来たまま心の中でワーワー叫びながら必死にアクセルを回し続けた。
ひどい雨の中なぜかゼロの使い魔のOP「YOU'RE THE ONE」を口づさんでた。
体は汗でギトギト、炎天下の下体は黒くなったのに不思議と心が真っ白になる感覚を覚えた。
心が綺麗になっていく感覚だ。
その時にオレが思ったのは極限状態に追い込むと人間はシンプルになるってことだ。
炎天下で晒されて汗だらけのなかで水が飲みたい涼しいところにいたい風呂に入りたい
というシンプルな欲望が頭の中をしめて
普段考えている雑念が消えるのだ。
それは自分自身が今、生きてるってことを本当に気づくってことだ。