東電に賠償責任が生ずるとすれば、それは事故と相当因果関係を有する全損害に及ぶ。
(一部の金融機関なんぞは賠償額に上限を設けよと主張しているようだが、そのような法律は現時点で存在せず、仮に立法して今回の事故に遡及適用しようとしても、それは被害者が既に有する損害賠償請求権を一方的に奪うから、財産権(憲法29条)侵害で違憲無効と思われる。)
そうすると問題は東電の資力である。存在しない金を払うことはできない(「無い袖は振れない」)。
東電は事業の性質上、恒常的な利益を見込めるから、長期的には資力が不足することは無いはずではある。
しかし、被害者は早期に救済する必要がある。道義的な意味だけではなく、法的にも損害の発生と同時に支払い義務があるし、賠償が遅れれば年5%の遅延損害金も発生する。
この当座の資金を捻出する手段が、例えば資産売却だったり給与削減だったりする。しかしこれでは不足するかもしれない。
そこで検討されるのが、誰かが東電に金を「貸し付け」て当座の賠償を行わせ、時間をかけて(利息も取って)「貸金」を回収する手段だ。「貸し付け」「貸金」が鍵カッコ付きなのは、法的に正しい意味で「貸し付け」(金銭消費貸借)である必要は無いからだ。社債や配当についての優先株等々、色々考えられる。
この「貸し付け」を行ってくれるのは誰か。金額や政治家の権能からいって、最も有望なのが国である。国が東電に金を「貸し付け」て、時間をかけて回収する。
そうすると、この「貸し付け」スキームを使う限り、東電に投入される税金は、後日(利息付きで)回収できるカネである。
このように税金を投入しても後日返ってくるのであれば、問題は少ないと思われる。気になるのは「返済期間」と「利回り」くらいのものだ。
仮にそうではなく、東電が負担を免れるような形での税金投入であれば、問題は違ってくる。私企業であり、事故の張本人である東電を、国民の負担によって救済すべきか否かが問われることになる(私は反対だ)。