2023-11-05

夢 (2023/11/5 No.1214)

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慣れない郊外の街で車を走らせていたせいか、すっかり道に迷ってしまった。行き止まりに車を停めて同乗者と運転を代わる。砂埃の舞う頭上を見上げると、夕闇を背景にハイウェイの高架がいくつも交差している。迷ったとはいえ、この場所特定する手がかりがないわけではない。まずは世田谷区であること。それから京王線新幹線高速道路が交差する場所であること。地図を調べればすぐに分かりそうだ。

一服しようと同乗者に煙草をもらって休んでいると、突然後ろから走ってきたトラックに追突され、車体はそのまま目の前の柵を突き破ってしまう。さらに数十メートルほど押し出され、鉱山の掘削地らしき場所に入ってようやく止まった。工事車両運搬車両が無数に行き交い砂埃を舞いあげている。このままでは邪魔になってしまう。仕方なく一周して敷地の外に出ようとすると、同乗者が「こういうとき一言謝りに行くんだよ」と言って車を降りていってしまった。追突されたのはこちらの方なのだから謝りに行くもなにもないだろうと思いつつ、帰りを待っていると、どこからともなく職員らしき制服の男か現れ、一枚のパンフレットを手渡してきた。そこには「人工温泉掘削事業出資者公募要項」という文字とともに、未来的なユートピア都市想像図が描かれている。どうやらここは空想都市建設企業で、この場所はそのための実験施設かなにかであるらしい。

同乗者はいつまでも帰ってこない。かといってずっとこの場所に留まるわけにもいかない。仕方なく一人で引き返して出口を探す。辺りは駅の構内のような人混みで、とても車で走り回れる様子ではない。辛うじて改札口の片隅に「車両専用」と書かれた小さなエレベーターを見つけた。先ほどのトラックもここを通ってやって来たのだろうか。とにかくそエレベーターに車を押し込んで一階のボタンを押す。一階のラベルには「カフェ野草」という店名が記されている。おそらく先に出た同乗者は隣にある人間用のエレベーターで降りていってしまったのだ。ここは三階、駆け下りれば追いつけるかもしれない。エレベーターボタンから手を離すと同時に階段を探して走る。だがどこにも階段は見当たらない。ようやく見つけた玩具のようなプラスチック階段は身ひとつがやっと通るだけの狭さで、しかも二階までしか通じていない。二階はショッピングモール。やはりどこにも階段がない。ここでも散々探し回ってようやく従業員用のバックヤード下り階段を見つけた。そこを駆け下りてゆくと例のカフェとやらの厨房らしき場所に辿り着いた。裏口のガラス戸をこじ開けてようやく外に出る。

打って変わって周囲には静かな田園の風景が広がっている。あれほど人波でごった返していたというのに、この閑散とした様子は何だろう。エレベーターの出口はどこだろうか。しばらく歩き回ってようやく納屋のような場所の奥に錆びた鉄扉を見つけた。同乗者は干し草の山に埋もれて待ちくたびれていた。車は取り出していないという。ということはまだエレベーターの中にあるはずだ。煤に汚れたボタンを押す。出てきたのはもう何年も放置していたかのような埃の積もった古びた車体だった。

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