理由は俺が地方民なのと、神の「身内にしか本を売らない」方針による。
俺が神を知ったのは、Twitterのリツイート経由。二次創作のいわゆる擬獣化というやつだが(全年齢だ)、元ネタの特徴を捉えてて、とてもよかった。
俺は神のアカウントを追いかけて、マロで感想を伝えた。新作が出るたびに喜んで、それを伝えて、リクエストの募集があったらそれも送った。神の体調ももちろん気遣った。
そんな神の擬獣化絵もかなりの量になって、まとめ本が出ることになった。俺は地方民だが、買って少しでも神に貢献したかったし、何より今まで描かれてきた絵を、手元で永久保存したかった。だが地方民だから多くは望まず、通販の予定があるかだけをマロで尋ねた。神は、自家通販の予定があると回答してくれた。
ところが、いつまで待っても自家通販の案内はなかった。代わりに、俺が仕事で行けなかった時間に開催されたTwitterのスペースで、自家通販の受付が行われて、そして締め切られていたことを知った。神曰く、擬獣化は身内ネタで特殊ジャンルだから、身内以外に本は売りたくないと。俺以外にも問い合わせた奴がいたらしく「お互い傷つかないために、通販はやめます」という旨のツイートが残ってた。
神の身内に生まれてこられなかったのが、悔しかった。でも同時に、そんなに身内ネタを外に流したくないなら、なんで最初から鍵垢で描いて、マロも作らないでおいてくれなかったんだと神を恨んでしまった。
魅力的な絵なんだよ。他にはないんだ。こっちは完全に受け身で、たまたまリツイートで絵を見たから追いかけたのに、何でこっちがストーカーみたいな言われ方されなきゃいけないんだ。そっちだって、リツイートやいいねやマロの数で承認欲求を満たしてたんだろ。まとめ本が出る量になるまでそれを重ねといて、今さら「お前は客じゃない」なんて、同人活動が趣味にすぎないといっても、あんまりすぎないか。
もうすぐ夏が来る。神が企画絵を始める頃だ。でも、可愛いふわふわの絵も、俺は手元に置かせてもらえない立場なんだと思うと虚しくなる。
推しの同人作家がいる奴。推すときは、ちゃんと名乗って推せ。匿名の感想は、しょせん匿名の重みでしか扱われない。本を売るに値する相手だと思われなくなる前に、ちゃんと自分の存在を知ってもらえ。俺みたいになる前に。