2020-05-19

[] #85-6「幻の10話」

≪ 前

こうして何とか説得に成功し、企画を通すことに成功した。

だが、アニメ作りは会議室でやるわけではい

ここからが本番だ。

それは誰もが知るところだが、だからといって良好なスタートダッシュを切れるとは限らない。

「『女子ダベ』の時は頼んでもないのに大金出してきて、こっちが頼んだら、これだけかよ……」

提示された予算額を聞いて、シューゴさんは頭を抱えた。

“頭を抱える”というのは慣用句だが、人間はそのような状況になると実際に頭を抱えた体勢になるらしい。

一般的相場から考えても、これは少ないぞ」

「それでも大分ねばったんですよ」

スポンサーが募れない以上、出せる予算はそれが限度なんだとか」

スタートダッシュは最悪に近かった。

いきなり躓いて怪我をしてしまい、かろうじて走れるレベル

トップ争いは絶望的で、完走できるかも予断を許さない状況。

契約、依頼できる奴は?」

「信頼できるアニメーターは、ほとんど他社に持っていかれてます

「まあ時期が時期だからな……」

予算の都合上、そもそも雇えるか怪しいですけどね」

「じゃあ、外注ほとんどできねえじゃんか」

まともな成果物を望むなら金と時間大前提である

アニメ作りに限ったことではなく、人が資本労働とはそういうものだ。

奉仕活動のような条件でクリエイティブなことはさせられない。

そんなことができるのは未来の猫型ロボットか、売名目的のセレブだけだろう。

故に課せられたノルマは“良いものを作る”ことではない。

“形になっている”かどうかだ。

「きっついなあ、おい。ギリギリと言っていいかすら怪しい」

しかし、それですら今のシューゴさんには高く険しい道のりだった。

これらの条件で到達するのは無茶振りもいいところだ。

「……癪だが仕方ない。やれることはやろう」

それでも走り続けるしかなかった。

特に監督シューゴさんにかかる負担は相当だ。

予算であるため、金のかかるようなことはできない。

納品スケジュールギリギリ

とにかく省けるところは省かないと間に合わない。

シューゴさんは己の流儀をかなぐり捨て、自身の英知と技術をフル活用する他なかった。

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記事への反応 -
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            • ≪ 前 「もし、あの“幻の10話”に、オレの指摘したリスクよりも大きなリターンがあるなら、封殺されるのはオレだったろう。オレのことをよく思っていない上役は、当時からたくさん...

              • 何度も言い続けてきたけど一向にやめないね みんなつまんないって言ってるし いい加減やめたほうがいいって

              • ≪ 前 「まあオレが何も言わなくても、放送局か広告代理店にマトモな奴が一人でもいれば、そこでストップはかかっていただろうがな」 「でも今こそ向き合ってみませんか、この“幻...

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