あれは私が、中堅大規模大学の人事でハラスメント対策の仕事をしていたときの話。
あるとき、「教職員の間や教員と学生の間でのバレンタインプレゼントは、それ自体ハラスメントではないか。そうでなくてもセクハラ・アカハラの温床になるのではないか」という問題提起が教員のお一人からなされた。
わたしは、その職務を下っ端として任されており、様々な情報を収集した結果、「たしかに問題点がある」と学者先生の意見に納得した。
しかし、ハラスメント対策の意思決定機関は教授陣が占めており、あくまで事務屋はサポート役。しかも事務方の上司は「バレンタインがハラスメントなんて学者の極論」と相手にしない。
結果、人文系・社会科学系の教授陣の一部は理解を示したものの、大半の教員は問題点を軽視ないし無視し、議題はお流れに。
とりわけ、法曹出身の実務家教員は様々な理屈をつけて教授陣の会議の場や事務方への「助言」というカタチで議題を流そうとした。
要約すると、「叩けばホコリが出る。ホコリが出ると掃除が面倒だ」という本音を、もっともらしい法的な建前で正当化したのだった。
たしかに、下手にハラスメントを自浄しようとすると学内の内紛が起きたりハラスメントの「容疑者」から逆に民事訴訟を起こされたり、大学のイメージが悪くなることもあるだろう。
いっそのこと、日本の俗流化した義理チョコバレンタイン文化はもうやめにして、本来の「恋人たちの特別な日」になってくれればいいのに。