2024-10-21

すみません幸せって売ってますか?

そんなことを言いながら私は店員に話しかけた。

自分でも何を聞いているのか、ちょっと頭がおかしいんじゃないかと思ったけど、なんだか言わずはいられなかった。

疲れてたんだと思う。仕事人間関係もぐちゃぐちゃで、なんか心がカラカラになってた。いつもの帰り道、ふと目に入った雑貨屋に吸い寄せられるように入って、気づけばそんな言葉が口をついて出ていた。

「えっと…幸せですか?」店員女の子は、最初は少し戸惑ったような顔をしていた。でもその後すぐに、「あ~、そこにあると思います」と、雑貨の棚を指さしてきた。店員さん、面倒くさそうだな、と思いながらその方向を見ると、可愛らしいキャンドルや置物が並んでいた。

「そういうことか…」と、軽く自嘲する私。しかし、ふと店員さんの方に視線を戻した時、彼女の表情が変わっていた。さっきまでの面倒くさそうな感じが消えていて、真剣に、ちょっと考え込んでいるようだった。

そして、店員さんは私の目をじっと見つめ、「…あなたの心の中にないなら、ないですね」と、柔らかく微笑んで言った。

その瞬間、なんだか胸にズシンと響いたんだ。冗談で始めた会話だったのに、彼女言葉がまっすぐ心に突き刺さった。「あなたの心の中にないなら、ないですね。」彼女笑顔でそう言ったけど、その言葉の重さに気づかされた。

私はしばらくその場で立ち尽くした。頭の中で彼女言葉を繰り返している自分がいた。心の中に、幸せがない…確かに最近は、そんな感覚だったかもしれない。どこかに置き忘れてきたような感じ。目の前のことに追われて、自分自身を見失っていた。

でも、彼女一言で少しだけ目が覚めた気がした。

「そっか、心の中にないなら、ないよね」私は独り言のようにつぶやいた。

「そうですね。でも、いつかきっと、見つかりますよ。」店員さんが優しく言ってくれた。なんだか、それだけで心が少し軽くなった気がする。小さな笑顔自然と出た。

ありがとう。じゃあ、キャンドルでも買おうかな。」

私はそう言って、小さなアロマキャンドルを手に取った。

きっとこのキャンドルを灯す頃には、少しでも自分の心の中にある「幸せ」に気づけるかもしれない。

店員さんの言葉のおかげで、そんな希望が見えた気がする。

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