自分でも何を聞いているのか、ちょっと頭がおかしいんじゃないかと思ったけど、なんだか言わずにはいられなかった。
疲れてたんだと思う。仕事も人間関係もぐちゃぐちゃで、なんか心がカラカラになってた。いつもの帰り道、ふと目に入った雑貨屋に吸い寄せられるように入って、気づけばそんな言葉が口をついて出ていた。
「えっと…幸せですか?」店員の女の子は、最初は少し戸惑ったような顔をしていた。でもその後すぐに、「あ~、そこにあると思います」と、雑貨の棚を指さしてきた。店員さん、面倒くさそうだな、と思いながらその方向を見ると、可愛らしいキャンドルや置物が並んでいた。
「そういうことか…」と、軽く自嘲する私。しかし、ふと店員さんの方に視線を戻した時、彼女の表情が変わっていた。さっきまでの面倒くさそうな感じが消えていて、真剣に、ちょっと考え込んでいるようだった。
そして、店員さんは私の目をじっと見つめ、「…あなたの心の中にないなら、ないですね」と、柔らかく微笑んで言った。
その瞬間、なんだか胸にズシンと響いたんだ。冗談で始めた会話だったのに、彼女の言葉がまっすぐ心に突き刺さった。「あなたの心の中にないなら、ないですね。」彼女は笑顔でそう言ったけど、その言葉の重さに気づかされた。
私はしばらくその場で立ち尽くした。頭の中で彼女の言葉を繰り返している自分がいた。心の中に、幸せがない…確かに最近は、そんな感覚だったかもしれない。どこかに置き忘れてきたような感じ。目の前のことに追われて、自分自身を見失っていた。
「そっか、心の中にないなら、ないよね」私は独り言のようにつぶやいた。
「そうですね。でも、いつかきっと、見つかりますよ。」店員さんが優しく言ってくれた。なんだか、それだけで心が少し軽くなった気がする。小さな笑顔が自然と出た。