血は繋がっていないが名字は同じ。
少し興味をもって、名前で検索したらすぐにTwitterのアカウントが出てきた。
彼はとにかく売れていなかった。
やっていることと言えばエキストラレベルのcm出演が年に二~三本と今にもつぶれそうな劇団の活動のみ。常識的に考えて、大丈夫かこいつ?と思ってしまうような売れなさぶりだ。
けれど何故か興味が湧いて、遡れるだけ遡ってツイートを読んだ。誰がどう考えても売れてないのに、一瞬しか映ってないcmを心底嬉しそうに宣伝したり、劇団員との楽しそうな練習風景をアップしたりしている姿が、見ていてとにかく痛々しくて、惨めで、こっちまで不安を煽られるような気分になって、何故だか目が離せなくなった。
コロナになってからはさらに目が離せなくなった。零細劇団の日常がコロナによって現実に飲み込まれていき、一人また一人と劇団員が減っていったのだ。
あれから一年。苦境にたたされるエンタメ業界の中で、彼はまだ演劇を続けていた。
私は時々思い出したように彼のTwitterを覗いてしまう。会ったこともない親戚の夢破れる瞬間を見届けたいという私は相当性格が悪いだろうとは思うが、予定調和のストーリーを追いかけている楽しさは何にも代えがたい。
廃業する前に一度だけ彼の演技が観たいと思う。