世間的には田舎と呼ばれる小さな地方都市で、長男として生まれた。
両親に加え、祖父母も一緒に住んでいて、広い庭のある家で、それが当たり前のようにして育った。
立派な庭だから、自分が手入れしてでも守りたいと、小学生の頃は思っていた。
だが中学、高校と上がるに連れ、部活だ勉強だと時間に追われ、いつしかそう思ったことを忘れるしかない自分がいた。
年に一度の、地元の祭もそうだ。この地に残って大人になったらあの場所に居るのだろうと、おっちゃん達を眺めながら思っていたのに。
中学の部活は、俺の地区の事情なんて知ったこっちゃない。高校じゃ尚更だった。
それでも合間を縫って参加してたのに、いつからか人が足りないからって他所の地区から来た奴らが多数派になってて、この土地に生まれたときから住んでるはずの俺のほうが疎外されてて、そして数年後にはその祭も無くなった。
変わらないでいてほしいと願った世界は脆くも崩れ去る、それを何度も感じながら、気づいたら大人になった。
しょせん、自分にはそれを守る力なんてなかったのだ。
中学高校の頃、都会に出ていきたがる奴らを、チャラい奴だと馬鹿にしてたくせに、結局自分も、仕事を理由に町を離れた。
そんな自分が悲しいと思う反面、子供の頃に思い描いた未来なんてないのだという諦めを受け入れないと、生きていけないと悟った。